研究課題/領域番号 |
20K15390
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
奥中 さゆり 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (70849942)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光触媒 / 太陽光 / 水素製造 / 有機合成 / 酸化物 |
研究実績の概要 |
本研究では、光エネルギーと半導体光触媒を用いて、水素と高付加価値な化学品を同時に製造する系の構築を目的としている。光触媒として金属元素ドーピングSrTiO3に着目し、芳香族アルコールやアミンを基質として添加した溶液からの水素と酸化生成物の生成を検証している。昨年度までに、RhドープSrTiO3(SrTiO3:Rh)を光触媒として用い、還元反応を促進する助触媒としてRuやPdを担持することで、可視光照射下でアセトニトリルあるいは水中で芳香族アルコールやアミンを酸化反応が進行することを見出した。 本年度は、昨年度までの成果を基に、SrTiO3:Rh を用いた選択酸化反応に関して、(1) 酸化反応を促進する助触媒の共担持効果、(2) 反応メカニズムの検証、(3) 高難度な基質の酸化への拡張性検討を行った。(1)については、多電子酸化可能な助触媒として知られているCo, Ni, Fe, Mnなどを担持し、その効果を検証した。その結果、これらの助触媒を共担持した場合に活性がやや向上することを見出した。 (2)については、各種環境下(Ar雰囲気下、暗所など)における反応や、ラジカルトラップ剤などの犠牲試薬を用いたコントロール実験を行うことで、反応メカニズムを検証した。その結果、水中と有機溶媒中ではメカニズムが異なることが明らかとなりつつあり、今後更なる検討を継続する予定である。(3)については、芳香族アルコールやアミンに加え、フラン系化合物などの基質へと拡張して検討を行い、これらの化合物についても可視光あるいは疑似太陽光照射下において選択酸化が進行することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画において2021年度予定として掲げている目標(助触媒効果、メカニズム解明、基質拡張)をほぼ達成しており、本研究における大目標となる「太陽光を用いた水中での選択酸化」を実現した。太陽光水素製造の分野では単一の光触媒では水分解反応が進行しなかったSrTiO3:Rhであるが、選択酸化し得る基質を系中に添加することにより、水素製造と同時に選択酸化を進行させることができることを見出した点は、本分野にとって大きな進展であると言える。以上のことから、本研究計画の現在までの達成度は、おおむね順調に進展している、と言える。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究成果について、その一部が年度中の学会発表および論文発表に間に合わず、これらの発表のために助成期間の延長手続を行った。2022年度では、追加、再現実験の実施を検証するとともに学会発表および学術誌への投稿を進める。また、2022年度に採択を受けた若手研究では、本研究で得た成果との橋渡しと連携を進めながら更なる有機合成系へと展開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度までの研究で得られた成果については、2022年度に学会発表および論文投稿を行う予定である。これらの学会発表および論文発表のための実験に要する消耗品費および旅費のため、2022年度に研究費を繰り越した。
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