令和4年度は、PCAWGとTCGAで公開されているシーケンスデータ、コピー数変異データ、 純度データ、臨床データを用いて、Whole-genome doubling(WGD)と予後との関係について網羅的な解析を行った。
全ゲノム倍加(Whole-genome doubling:WGD)は、がんにおいてよく見られる変異である。様々な研究により、WGDはがんの予後不良と関連することが示唆されている。しかし、WGDの発生と予後との詳細な関連は不明なままである。本研究では、Pan-Cancer Analysis of Whole Genomes(PCAWG)とThe Cancer Genome Atlas(TCGA)のシークエンスデータを用いて、WGDが予後にどのように影響するかを明らかにすることを目的とした。WGD関連因子を用いた生存率解析の結果、WGDの有無にかかわらず、LOHの長さとchr17のLOHが予後不良と関連することが示された。また、WGDのないサンプルでは、これら2つの因子に加え、腫瘍抑制遺伝子の変異数が予後と関連することが示された。さらに、両サンプルで予後に関連する遺伝子を個別に探索した。本研究により、WGDのあるサンプルとないサンプルでは、予後に関連する因子が有意に異なることが明らかになった。本研究は、WGDを有するサンプルと有さないサンプルで異なる治療戦略の必要性を強調するものである。
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