異性(雌や雌雄同体)に付着して暮らす体サイズの非常に小さな雄、すなわち矮雄は、海洋生物の様々な分類群で見られるが、その進化条件の理解は遅れている。本研究では、海産の小型二枚貝類であるウロコガイ科を主な対象として、繁殖集団サイズの縮小と矮雄進化の関連性について検証した。野外調査や標本調査により繁殖集団サイズのデータを得るとともに、網羅的な分子系統樹を構築した。その結果、本科では矮雄が少なくとも7回以上独立に進化していることが示唆され、矮雄を持つ系統は繁殖集団サイズが小さい傾向が見られた。本研究の知見は、矮雄を持つ他の海洋生物の系との比較を通じて、矮雄進化の総合理解に大きく貢献するものである。
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