昨年度、マウス胎児脳において下垂体後葉へ伸長中のバゾプレシンニューロン軸索上に発現する軸索誘導因子(ここではXとする) を同定した。そこで本年度は、因子Xがバゾプレシンニューロンの軸索投射および下垂体後葉形成に関与するのか検討するべく、マウスES細胞からの視床下部ニューロン分化誘導系において、因子Xの過剰発現および発現抑制を試みた。過剰発現系について、当講座で保有しているTet-ONシステムを搭載したPiggyBacベクターを用いて、因子Xの発現ベクターを作製した。作製したベクターが実際に因子Xを発現できるかいなか検討するため、因子Xを持たないHEK293細胞にベクターをトランスフェクションし、免疫染色とウェスタンブロットにより因子Xの発現を確認した。その結果、対照群では因子Xの発現は見られなかったが、ドキシサイクリンにより発現誘導した群では因子Xが検出された。このことから作製したベクターがドキシサイクリン誘導性に因子Xを発現できることが示された。そこで次に、作製したベクターをマウスES細胞にトランスフェクションし、因子Xを過剰発現するクローンを複数個獲得した。現在、これらクローンから分化誘導した視床下部ニューロンの軸索が対照群と比較して有意に伸長あるいは抑制されるのかを検討している。発現抑制系については、因子XのshRNAを搭載したAAV ベクターを購入した。このベクターを用いて、最も効果的なノックダウンを実現できる条件を現在検討しているところである。
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