本研究により抗菌ペプチドSLPIの腸管保護作用が証明され、大建中湯の抗炎症作用の一つとして、SLPIの発現増強を介した腸管保護作用があることが示唆された。近年、炎症性腸疾患(IBD)の治療薬として様々な抗体製剤が開発されているが、これら薬剤は高価で、免疫抑制による副作用の懸念がある。大建中湯は本邦で古典的に用いられてきた漢方薬で、安価なことに加え、重篤な副作用は生じない。そのため、大建中湯がIBDの治療薬として応用されれば、安価で安全性の高い薬剤が治療選択肢に加わることになり医療コストの削減も期待できる。本研究は大建中湯のIBD領域における臨床応用に向けての基礎になる研究と考えている。
|