最近の研究により、髄膜リンパ管や脳皮質の血管周囲腔(glymphatic system)など、中枢神経系のリンパ系がCSF経路を担うという説が主流になりつつある。このような背景のなか、上記の研究成果は、くも膜顆粒もリンパ系としてCSF吸収に機能する可能性を示唆するものである。また、本研究で観察されたヒトくも膜顆粒の形態的特徴は、以前に我々がブタ脳髄膜で見出した形態的特徴と類似していることから、この形態は進化的に保存されている可能性が示された。さらに本研究で得られた知見は、水頭症や脳脊髄液漏出症など、CSF循環機構の破綻と関連する疾患の発症機序の理解や診断/治療の応用にもつながると期待される。
|