研究課題/領域番号 |
20K16324
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
豊住 武司 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (80645606)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 食道扁平上皮癌 / 低酸素 / Fra-1 / HIF-1α |
研究実績の概要 |
これまでに低酸素環境下において食道扁平上皮癌細胞株のHIF-1α(Hypoxia Inducible Factor-1α)発現が増強されることを確認し、HIF-1α高発現による細胞機能(増殖能、遊走能、浸潤能、幹細胞化…など)の活性化を確認した。続けて食道扁平上皮癌細胞株を用いたHIF-1αノックダウンモデルを作成し、食道扁平上皮癌細胞株に生じた細胞機能活性化がHIF-1αノックダウンによって抑制されることを確認した。これらの結果は食道扁平上皮癌の悪性度と低酸素環境ならびにHIF-1α発現が深く関連することを示唆しており、HIF-1αが新たな研究シーズならびに治療ターゲットとして注目を集めるものと確信する。 またHIF-1αの下流カスケードとしてWnt/β-catenin経路に着目し、HIF-1αの高発現がWnt/β-catenin経路関連タンパクの発現増加に関連することを確認した。特にWnt/β-catenin経路内で重要な役割を占めるβ-cateninに関してHIF-1αとの共免疫沈降(Co-IP)を行い、食道扁平上皮癌細胞株内における両者の結合状態を示唆する結果を得た。食道扁平上皮癌におけるHIF-1αの下流カスケードを明らかにした研究報告はいまだ少なく、本研究結果が新たな知見を提供すると確信する。 一方で実臨床における食道扁平上皮癌患者の手術検体を用いてHIF-1α抗体を使用した免疫染色を行い、HIF-1α高発現群の予後がHIF-1α低発現群の予後に比較して有意に悪化することを確認した。HIF-1α発現が実際の食道扁平上皮癌患者における予後予測因子になり得ることが明らかにされ、本研究の意義をより一層明確にするものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
食道扁平上皮癌細胞株におけるHIF-1αの発現変化確認、HIF-1α発現変化によって生じる各種細胞機能変化の確認、HIF-1αの下流カスケードとしてのWnt/β-catenin経路の同定、臨床検体におけるHIF-1α発現とその意義の解析などの項目に関してはいずれも順調に研究を遂行しており、いずれも良好な結果を得ている。 一方でHIF-1αの上流カスケードに位置するタンパクとして着目しているFra-1の発現とHIF-1α発現に関する基礎的実験はいまだ進行中であり、次年度以降にさらに研究を進める予定としている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き食道扁平上皮癌におけるHIF-1αの上流カスケード候補としてのFra-1に関連する基礎的実験を継続する。Fra-1ノックダウンモデル(すでに本研究室で確立済み)を用いたHIF-1α発現変化や低酸素環境下の細胞機能解析に関してはすでに実験を開始しており、今後も継続を予定している。 低酸素環境下における動物モデルを用いたHIF-1α機能解析や治療ターゲットの探索も検討しており、基礎的実験の進行状況と合わせて動物実験への着手も検討する。
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