• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

舌がんの代謝解析による新たな治療戦略の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K16329
研究機関滋賀医科大学

研究代表者

村上 翔子  滋賀医科大学, 医学部, 医師(非常勤) (50773975)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードがん代謝解析 / 舌がん
研究実績の概要

がん研究において、生体の構造や機能を模倣し、動物実験の代替となりうる3D培養系が期待されている。本研究では、足場として超微細シリカファイバーでできたCellbedを使った新たな3D培養系”tissueoid cell culture system”を用いた。細胞外基質を使用しないため、純粋ながん細胞から代謝物を抽出し解析に使用できる。本研究では、4種類の舌癌細胞株を用いて、従来からの2D培養群(2D)、tissueoid cell culture systemを用いた3D培養群(3D)、舌癌細胞をヌードマウスに異種移植したxenograft群(xenograft)の3群を作成し、網羅的な代謝解析を行った。
代謝解析の主成分解析では、2Dでは3D, xenograftと異なり、ほとんどのプロットが狭い範囲に集まっていた。クラスタリング解析では、2Dは3D, xenograftと比較しほとんどの代謝物のピーク値が著しく低かった。3Dとxenograftではピーク値が高く類似している代謝物が多かった。3群のうちxenograftのみ低いピーク値を示したものは解糖中間体が多く、xenograftのみ高いピーク値を示したものは肝臓での代謝物である尿素やコリン代謝物、プリン代謝物が多かった。ミトコンドリア代謝ではATP, ADP量は、2Dでは3Dとxenograftよりも有意に低値であった。バイオマスであるアミノ酸やプリンヌクレオチドの産生量は、2Dでは低値であったが、3Dとxenograftではともに高値を示した。
以上より、2Dと3Dでは舌がん代謝は大きく異なっていた。一方、3Dの代謝物の多くはxenograftの代謝物と類似していた。しかし、xenograftはがん細胞周囲にある宿主由来の間質や血流の影響を受けるため、これらに起因する代謝物が他の群との違いとして現れていた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

4種類の舌癌細胞株を用いて、従来からの2D培養群、tissueoid cell culture systemを用いた3D培養群、舌癌細胞をヌードマウスに異種移植したxenograft群の3群を作成し、網羅的な代謝解析を行うことができたため。

今後の研究の推進方策

ウェスタンブロット解析などを用いてミトコンドリア機能解析を行い、より詳細ながん細胞ミトコンドリアのエネルギー代謝解析を行う。代謝解析の中から舌がん特有の代謝変換を発見し、代謝関連酵素に対する小分子化合物を見出し、舌癌の増殖、転移を制御するメカニズム解明につなげていきたい。
さらに、本tissueoid cell culture systemを利用して、in vitroからin vivoへ移る前臨床段階で薬剤耐性試験や薬剤感受性試験の大量スクリーニングへの応用を検討していきたい。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルス感染拡大の影響で学術集会が中止またはオンライン開催となり、旅費がかからなかったことや国際学会への参加ができなかったため。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Similarities and differences in metabolites of tongue cancer cells among two- and three-dimensional cultures and xenografts2021

    • 著者名/発表者名
      Shoko Murakami , Hiroyuki Tanaka , Takahisa Nakayama , Naoko Taniura , Toru Miyake , Masaji Tani , Ryoji Kushima , Gaku Yamamoto , Hiroyuki Sugihara , Ken-Ichi Mukaisho
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 112 ページ: 918~931

    • DOI

      10.1111/cas.14749.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Differences in the Central Energy Metabolism of Cancer Cells between Conventional 2D and Novel 3D Culture Systems2021

    • 著者名/発表者名
      Ryo Ikari, Ken-Ichi Mukaisho, Susumu Kageyama, Masayuki Nagasawa, Shigehisa Kubota, Takahisa Nakayama, Shoko Murakami, Naoko Taniura, Hiroyuki Tanaka, Ryoji P Kushima, Akihiro Kawauchi
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 22 ページ: 1805

    • DOI

      10.3390/ijms22041805.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Application of “Tissueoid Cell Culture System” Using a Silicate Fiber Scaffold for Cancer Research2020

    • 著者名/発表者名
      Shoko Murakami, Ken-ichi Mukaisho, Takuya Iwasa, Masaaki Kawabe, Saori Yoshida, Naoko Taniura, Takahisa Nakayama, Masaharu Noi, Gaku Yamamoto, Hiroyuki Sugihara
    • 雑誌名

      Pathobiology

      巻: 87 ページ: 291~301

    • DOI

      10.1159/000509133

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 2D培養と3D培養(Tissueoid cell culture system)を用いた舌がん代謝の比較2020

    • 著者名/発表者名
      村上翔子
    • 学会等名
      第79回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] 舌がん代謝における2D培養と3D培養システム(Tissueoid cell culture system)の比較2020

    • 著者名/発表者名
      村上翔子
    • 学会等名
      第74回日本口腔科学会学術集会

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi