研究課題
本研究では、先ず抗FIRΔexon2自己抗体の存在を癌患者血清中で検証し、その結果を踏まえ、患者の予後および治療反応性に本自己抗体がマーカーとして臨床応用できるか否かを解明することであった。ゆえに、抗FIRΔexon2自己抗体の検出および抗体量が癌腫で特異的に増加しているか?そして、既存腫瘍マーカーよりも臨床的意義を見出せるか?を具体的な到達目標とし以下の2課題を上程した。課題1:主に消化器癌における抗FIRΔexon2自己抗体の臨床的意義の解析。研究成果は、AlphaLISA法を用いて食道癌患者と健常者間で本抗体量の比較解析から2群間に有意差を見出した。本抗体は既存腫瘍マーカーとの相関は認めなかった。また、ROC曲線解析より他の腫瘍マーカーよりも最も高いAUC値を示した。さらに、診断効率向上を目的に組合せアルゴリズムを開発した。その結果、抗FIRΔexon2自己抗体+p53抗体の組合せは抗FIRΔexon2自己抗体単独よりも高いAUC値が得られ、食道癌患者における臨床的有用性を報告した(Sohei Kobayashi. et al, Cancer sci 2019;110:6.)。さらに、胃癌・大腸癌患者を対象に本研究を深化させ、胃癌患者でも高い臨床的有用性を証明し論文報告した(Sohei Kobayashi. et al, Cancer sci 2021;112:2.)。現在は、大腸癌患者における研究成果を論文投稿中である。課題2:サンドイッチELISA確立のための抗体作製とAlphaLISA法との臨床的意義をすり合わせすること。研究成果は、ファージディスプレイ法を用いて不安定な構造を持つFIRΔexon2のアミノ末端に対するモノクローナル抗体の作製に成功した。作製したモノクローナル抗体の性能評価を実施し、最終的にサンドイッチELISA法の開発に到達した。また、作製したモノクローナル抗体が抗がん作用を有する可能性をも示唆するに至った。現在は更なる感度を高めるべく改良中である。
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BMC Cancer
巻: 23 ページ: 356
10.1186/s12885-023-10845-y