研究実績の概要 |
これまでに、ゲムシタビン耐性膵癌細胞株の培養上清で亢進しているタンパクの解析から、70kDaのM2BPの産生が亢進していることを見出した。70kDaのM2BPを最も強く認識する抗体(以下、抗体A)を作成したところ、抗体Aは立体構造を認識することで70kDaのM2BP fragmentを特異的に認識することが示唆されている。また膵癌切除検体を用いた免疫染色、およびin vitroにおける膵癌細胞株とマクロファージの共培養系にて、70kDaのM2BPが腫瘍関連マクロファージの一部を誘導することが示唆された。 以上より、膵癌細胞から分泌されるM2BPが腫瘍関連マクロファージを介して膵癌の治療抵抗性を導くという仮説を立て、詳細について解析することとした。 我々は、膵癌の治療抵抗性における腫瘍関連マクロファージと70kDa M2BPの発現意義について検討することを目的とした。 方法は以下の通りである。膵癌細胞株におけるM2BP発現を確認し、M0 マクロファージと膵癌細胞株を共培養することで生じるマクロファージの極性変化を評価する。また、ヒト単球細胞株THP-1細胞より誘導したM2 マクロファージと膵癌細胞株を共培養し化学療法耐性を評価する。術前治療なしの膵癌切除標本を用いて抗CD68抗体、抗CD163抗体による免疫組織化学を行い陽性マクロファージの個数、全生存期間や無再発生存期間を比較検討する。 結果、THP-1細胞からM0マクロファージとM2マクロファージが誘導されることを確認した。膵癌細胞株が70kDaのM2BPを発現することを確認した。免疫組織化学でCD68, CD163の発現数による群間比較を行ったところ、全生存期間や無再発生存期間に有意差を認めなかった。 今後の方針は、免疫組織化学において抗体Aを用いた発現評価、M2マクロファージと共培養した膵癌細胞株の化学療法耐性について解析する。
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