研究課題/領域番号 |
20K16531
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
玄 美燕 城西大学, 薬学部, 助手 (50711751)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 抗ネクロトーシス作用 / 抗酸化作用 / 虚血性脳血管障害 / 脳保護剤 / フェルラ酸誘導体 / 酸化ストレス / 計算化学 |
研究実績の概要 |
脳梗塞に代表される虚血性脳血管障害は、梗塞中心部では脳細胞の不可逆的なネクローシスが、梗塞周辺部は酸化ストレスによってアポトーシスが誘導される。これまでにネクローシスは「制御不能な細胞死」とされており、主にアポトーシスをターゲットとした抗酸化物質による脳保護療法が注目されてきた。しかし近年、「制御可能なネクローシス様細胞死(ネクロトーシス)」の存在が明らかとなり、このネクロトーシス抑制が新たな治療戦略と成り得る可能性が示された。しかし、抗酸化作用を有し、かつ特異的にネクロトーシスを抑制できる化合物の報告例はない。以上より、本研究では、抗酸化作用とネクロトーシス抑制作用の両方を兼ね備えた化合物を探索し、その効果を詳細に検討することにより、虚血性脳血管障害に対する効果的な治療薬となり得るかについて検証することを目的とした。 申請者は、これまでにフェルラ酸(FA)の抗酸化作用を増強した誘導体(FAD)を複数デザインし、その脳保護作用を検討してきた。そこで本研究では、新たにネクロトーシス抑制作用を併せ持つFADを探索することにした。すでに初期段階のスクリーニングは完了しており、抗酸化作用を有し、かつ計算化学によりRIPK1(ネクロトーシス誘発経路の調節蛋白質)との結合部位がNec-1(既存のネクロトーシス抑制剤)と同等なスコアを示す候補化合物を抽出した。 初年度においては、培養神経細胞(Neuro-2a細胞)における酸化ストレス傷害に対して、候補化合物の細胞保護効果を検討した。その結果、候補化合物FAD041は低濃度から強い細胞保護効果を示し、この保護効果には抗酸化作用が寄与することを明らかにした。さらに、酸化ストレス下において、FAD041の酸化による産生物にも強い細胞保護効果を有することが明らかとなり、結果として酸化ストレスにより誘導される細胞死を強く抑制する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、「抗ネクロトーシス抑制作用を持ち合わせた抗酸化化合物は、制御不能なネクローシス様細胞死の領域である虚血中心部の障害を含めて、効率よく虚血性細胞死を抑制し、新しい虚血性脳血管障害の治療薬となりえるか」を検証することを目的とするものである。初年度は、予備研究から抽出した候補化合物を用いて、酸化ストレスによって誘導された細胞死に対して細胞保護効果を示すかを検討した。その結果、低濃度から濃度依存的に強い細胞保護効果を示すFAD041を見出すことができた。当初の研究計画に沿って、擬似虚血再灌流状態の培養神経細胞を用いた候補化合物のスクリーニングし、最も優れた候補化合物を選択することができたため、本研究は概ね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、FAD041の細胞保護作用メカニズムを解析するため、酸化ストレス傷害やアポトーシス経路、ネクロトーシス経路に対するFAD041の作用を生化学的・分子生物学的手法を用いて行う。本実験に用いるFAD041の効果が芳しくない場合は、その結果を計算化学にフィードバックして再度改良を加え、目的の化合物の探索を続ける。続いて、虚血性脳血管障害に対する候補化合物の神経細胞保護効果およびそのメカニズムをin vivo実験にて検証する。これにより、生体における脳保護効果を検証するとともに、有効な投与量・投与時間についても明らかにする。今回、抗酸化作用による脳保護に加え、抗ネクロトーシス作用も併せ持つ化合物を開発できれば、より強い治療効果が期待できるのではないかと考える。すなわち、従来の虚血周辺部の治療に加え、今まで治療に至らなかった虚血中心部の障害も軽減できれば、障害を劇的に軽減できる可能性を示すことができると期待している。
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