研究実績の概要 |
2022年度は大阪大学神経内科で採取した検体を追加することで日本人多発性硬化症605例のSNPタイピングデータを作成した。コントロール検体数も昨年度から増加し、50,484例のSNPタイピングデータを使用した。最終的に8,855,957 variantsについてゲノムワイド関連解析を実施した。前年度からサンプル数を増加させたが、ゲノムワイド水準を満たす関連領域は2021年度実施のものと同様、MHC領域のみであった。2019年にScience誌に掲載された国際的な多発性硬化症のゲノムコンソーシアム(IMSGC)によって実施された多発性硬化症のゲノムワイド関連解析結果のdiscovery phaseのサマリーと今回作成したゲノムワイド関連解析の結果を用いてメタ解析を実施した(多発性硬化症15,407例、コントロール77,187例)。同解析では新規の関連領域の同定には至らなかった。日本人視神経脊髄炎225例のSNPタイピングデータを作成し、多発性硬化症と同じコントロール群を用いてゲノムワイド関連解析を実施した。MHC領域に加えて6番染色体に存在するCCR6にゲノムワイド水準を満たす新規関連領域を同定した。次に日本人形質に関するゲノムワイド関連解析データと今回作成した日本人多発性硬化症ゲノムワイド関連解析データを用いたメンデルランダム化解析を実施した。形質群、多発性硬化症のゲノムワイド関連解析のコントロール群に共通サンプルを有することが判明し、一般的なメンデルランダム化解析手法での因果関係の推定は困難であった。サンプル重複を考慮したメンデルランダム化解析手法を用いて欧米人で報告されている肥満と多発性硬化症との因果関係について解析を実施したが、有意な関連は示されなかった。
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