研究課題/領域番号 |
20K16676
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
岡安 寛明 獨協医科大学, 医学部, 講師 (80459619)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 心拍変動 / Deceleration capacity / 心臓突然死 / 統合失調症 / 気分障害 / 心電図 / 抗精神病薬 / 抗うつ薬 |
研究実績の概要 |
文書にて同意を得られた統合失調相患者127名(男性66名、年齢54.9±13.4)に対して、心拍センサ(my Beat ウェアラブル心拍センサ/WHS-1:ユニオンツール株式会社)を用いて10分間心拍を測定し、RRI Analyzer(同社)を用いて、心機能の予備能をより強く反映するとされる瞬時心拍変動の減速能(Deceleration capacity:DC)を可能な限り測定条件をあわせて計測した。DCの平均値は4.41 (±2.68)msであった。また、得られた結果と患者の年齢、性別、Body Mass Index、QT間隔、内服内容との関連を重回帰分析で検討した。年齢(p<0.001)と抗精神病薬の投与(p<0.05)が用量依存性にDCを減少することが示され、個々の抗精神病薬では、オランザピン(p<0.05)、リスペリドン(p<0.05)、ゾテピン(p<0.05)が用量依存性にDCを減少させることが確認された。さらにこれまで致死的不整脈の予測因子として用いられていたQT間隔とは関連を認めないことがわかり、DCは心機能を評価するうえで、QT間隔とは異なった独自の因子として用いられる可能性があることが示唆された。また、文書にて同意を得られた健常者からも同様の手法でDCを測定し、年齢、性別を調整した統合失調症患者68名と健常者68名でDCを比較検討したところ、抗精神病薬内服中の統合失調症患者は心機能の予備能が低下しやすいことが示された。現在、抗うつ薬など内服している気分障害患者のDCを測定することも開始しており、これまでに文書にて同意を得られた気分障害患者73名から、同様の手法でDCの測定を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに120名以上の統合失調症患者から、Deceleration capacity (DC)を測定して、抗精神病薬や心電図QT間隔との関連を検討し、また、60名以上の健常者からもDCを測定し、統合失調症患者のDC値と比較検討することができている。さらに70名以上の気分障害患者からもDCを測定しているなど、当初に設定している研究参加者の目標人数に順調に達してきていると思われる。また、これまでの結果を学会報告できていることからもおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、統合失調症患者、気分障害患者、健常者からのDeceleration capacity (DC)測定を継続し、症例数を増やし、向精神薬の内服量や、QT間隔との関連の有無について比較検討していく。また、得られた結果を英語論文にまとめ、評価の高い英語論文雑誌への投稿を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
DCを測定をより迅速に行うために、複数の施設で測定しようと機材を複数購入する予定であったが、本年度は概ね計画通りに測定を行えたこともあり、次年度に他施設での測定を行うこととし、未使用額はその経費に充てることとした。
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