研究課題
本研究の目的は脳腫瘍に対して高線量をピンポイントで照射する定位放射線治療において、腫瘍制御率を保証するために必要とされる照射位置精度を腫瘍の種類やサイズ毎に評価し、これらの照射位置精度を実際の治療前に、従来法よりも簡便かつ超高精度に検証する方法を開発することである。2020年度は脳腫瘍に対する定位放射線治療について、照射位置誤差が腫瘍制御率及び正常脳の脳壊死へ与える影響を、放射線生物学的モデル式を用いて腫瘍サイズ毎にシミュレーションした。腫瘍の種類は転移性脳腫瘍と脳動静脈奇形とし、これらに対応する放射線生物学的パラメータを使用した。その結果、照射位置誤差は腫瘍へ投与される線量と腫瘍制御率の低下に大きく関連し、腫瘍サイズが小さいほど顕著になることが明らかになった。特に腫瘍サイズが5mm程度と極めて小さい場合には、腫瘍制御率の低下を3%以内とするためには、0.5mm程度と厳密な照射位置精度が必要とされることが示唆された。(2020年5月第76回日本放射線技術学会総会学術大会にて報告)。次いで、定位放射線治療装置であるCyberKnifeから出力されるログファイルデータを用いた照射位置精度解析の一連の手順を構築した。具体的にはログファイルデータに記載されているCyberKnifeの照射時の3次元座標情報をもとに、行列演算や座標変換などの数学的処理を施して照射位置誤差を0.1mm単位で導出する手順を構築した。
2: おおむね順調に進展している
研究計画調書に沿って研究開発を進めており、頭部定位放射線治療における腫瘍制御率を保証するために必要な照射位置精度の解析と、ログファイルデータを用いた照射位置精度の解析方法の構築は概ね達成できたと考える。したがって現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
2021年度は以下の通り研究を推進する予定である。・頭部定位放射線治療における腫瘍制御率を保証するために必要な照射位置精度の解析結果の論文投稿・ログファイルデータを用いた照射位置精度の解析法の妥当性の評価とプログラム化
新型コロナウイルス蔓延の影響で当初現地参加予定であった学会がWeb開催となり、旅費の支出を抑えられたため。2021年度もコロナウイルス感染拡大防止の観点から、国内外の学術大会の参加が困難であることが予想されるため、次年度使用額については、主に研究解析および英語論文を執筆するために必要な書籍やソフトウェアの購入、また英語論文に係る校正費および掲載費等に充てる。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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