Clonal hematopoiesis による腫瘍微小環境の変化と放射線抵抗性

2021 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 20K16824
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 立川 章太郎 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (40816550)
• 研究期間 (年度): 2020-04-01 – 2023-03-31
• キーワード: Clonal Hematopoiesis / 放射線治療抵抗性 / 腫瘍微小環境 / DNA変異解析

研究実績の概要

Clonal Hematopoiesis (CH) とは血液学的異常が無い人に血液細胞の体細胞クローンの増殖を認めることと定義され、一般的に加齢とともに頻度が増加することが知られている。近年、CH がアテローム性心血管疾患のリスクとなることが判明し、さらにCH を有するマクロファージが血管内皮の活性化を介して局所の炎症に関連することが報告されている (Jaiswal S et al. N Engl J Med. 2017 Jul 13;377(2):111-121)。また、あらゆる種類の担癌患者における target sequence解析の報告では CH の変異アリル頻度の増加が、血液悪性疾患による死亡よりも原疾患による死亡と関連していたことより何らかの治療抵抗性に関わっている可能性が示唆された (Coombs CC et al. Cell Stem Cell. 2017 Sep 7;21(3):374-382.e4)。以上より、CH が局所の炎症を惹起し腫瘍環境の変化に関わっている可能性を申請者は考えた。一方、慢性炎症や血管新生を始めとする腫瘍微小環境の放射線治療抵抗性へ果たす役割は大きい。しかし、腫瘍微小環境が感受性に直接影響する放射線治療と、CH との関連については未だ不明である。それを解明し、放射線治療抵抗性に対する新たな治療標的や難治性の晩期合併症予防のための新たな手段を模索するのが本研究の目的である。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究は2020年度から開始しており、現時点で頭頸部癌患者67例のシークエンス解析が完了している。GATK Best Practicesに沿った解析とQIAGEN社の CLC Genomics Workbenchの2種類のvariant callerを用いて重複する変異を真の変異とし、かつ既報の一般的なハードフィルタリングに加えてToMMo 4.7kJPNを用いてアリル変異1%以上の変異をgermlineの変異として除外した。その結果、CHを有する患者割合は3割程度であり概ね既報通りであること、また変異遺伝子種類もこれまでの報告で頻度が高いものが抽出されていることを確認している。また、CHを有する患者で局所再発率の上昇が見られ、多変量解析においてもCHの存在は有意なリスク因子となった。
臨床検体で上記結果が得られたため、CHマウスモデルを用いた in vivoでの解析を予定したが、本学動物実験施設の改修などもありマウスの導入に時間を要したため進捗は当初の予定からはやや遅れている。

今後の研究の推進方策

2022/7にはマウス導入予定であるため、マウス導入後はCHマウスモデルを確立し、放射線抵抗性にCHがどのような影響を及ぼすか、scRNA-seqなども用いて検討していく。

次年度使用額が生じた理由

少額のため消耗品に使用予定。

研究成果

• [雑誌論文] Poly (ADP-ribose) polymerase inhibitors sensitize cancer cells to hypofractionated radiotherapy through altered selection of DNA double-strand break repair pathways. (2022)
  • 著者名/発表者名: Yuji Seo , Keisuke Tamari , Yutaka Takahashi , Kazumasa Minami , Shotaro Tatekawa , Fumiaki Isohashi , Osamu Suzuki , Yuichi Akino , Kazuhiko Ogawa
  • 雑誌名: International journal of radiation biology 巻: none ページ: 1,13
  • DOI: 10.1080/09553002.2022.20
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Stereotactic Ablative Radiotherapy Using CyberKnife for Stage I Non-small-cell Lung Cancer: A Retrospective Analysis. (2022)
  • 著者名/発表者名: Kazuhiko Hayashi , Osamu Suzuki , Hiroya Shiomi , Masataka Nakai , Kei Fujiwara , Erina Nakanishi , Shotaro Tatekawa , Takero Hirata , Keisuke Tamari , Haruhiko Hirata , Soichiro Funaki , Yuji Seo , Yoshito Takeda , Fumiaki Isohashi , Yasushi Shintani , Kazuhiko Ogawa
  • 雑誌名: Anticancer research 巻: 42 ページ: 321, 327
  • DOI: 10.21873/anticanres.15488
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Methylosystem for Cancer Sieging Strategy (2021)
  • 著者名/発表者名: Shotaro Tatekawa , Ken Ofusa , Ryota Chijimatsu , Andrea Vecchione , Keisuke Tamari , Kazuhiko Ogawa , Hideshi Ishii
  • 雑誌名: Cancers 巻: 13 ページ: 5088, 5088
  • DOI: 10.3390/cancers13205088
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Monitoring expiratory carbon monoxide to study the effect of complete smoking cessation on definitive radiation therapy for early stage glottic carcinoma. (2021)
  • 著者名/発表者名: Shotaro Tatekawa , Shigetoshi Shimamoto , Yoshiaki Miyata , Yutaro Yoshino , Takero Hirata , Keisuke Tamari , Yuji Seo , Fumiaki Isohashi , Yoshifumi Yamamoto , Atsuhiko Uno , Hidenori Inohara , Kazuhiko Ogawa
  • 雑誌名: Acta oncologica 巻: 60 ページ: 582, 588
  • DOI: 10.1080/0284186X.2020.1865563
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] 抗CTLA-4抗体を使った免疫療法と放射線療法の併用治療は、膵管癌の局所のみならず遠隔巣においても抗腫瘍効果が得られる (2021)
  • 著者名/発表者名: 山本 純也 , 高橋 豊 , 皆巳 和賢 , 玉利 慶介 , 勝木 翔平 , 武中 渉 , 松谷 英樹 , 立川 章太郎 , 小川 和彦 , 小泉 雅彦
  • 学会等名: 日本癌学会総会
• [学会発表] マウス骨肉腫モデルに対する抗PD-L1抗体治療において治療順番に関わらず放射線治療は全身性の抗腫瘍効果を引き起こす (2021)
  • 著者名/発表者名: 勝木 翔平 , 高橋 豊 , 玉利 慶介 , 皆巳 和賢 , 武中 渉 , 山本 純也 , 松谷 英樹 , 立川 章太郎 , 小川 和彦 , 小泉 雅彦
  • 学会等名: 日本癌学会総会
• [学会発表] 抗CTLA-4抗体併用下での放射線治療の線量増加による全身性抗腫瘍効果の増強について (2021)
  • 著者名/発表者名: 武中 渉 , 高橋 豊 , 皆巳 和賢 , 玉利 慶介 , 立川 章太郎 , 勝木 翔平 , 山本 純也 , 松谷 英樹 , 小泉 雅彦 , 小川 和彦
  • 学会等名: 日本癌学会総会
• [学会発表] 松谷 英樹 , 玉利 慶介 , 立川 章太郎 , 皆巳 和賢 , 高橋 豊 , 武中 渉 , 勝木 翔平 , 山本 純也 , 小川 和彦 , 小泉 雅彦 (2021)
  • 著者名/発表者名: p16-HNSCC患者の血漿中cell-free DNAを用いたdigital-PCRによるHPV-DNA検出
  • 学会等名: 日本癌学会
• [学会発表] Alteration of tumor microenvironment and radioresistance induced by clonal hematopoiesis (2021)
  • 著者名/発表者名: 立川 章太郎 , 元岡 大祐 , 玉利 慶介 , 皆巳 和賢 , 瀬尾 雄二 , 高橋 豊 , 今野 雅允 , 石井 秀始 , 猪原 秀典 , 小川 和彦
  • 学会等名: 日本血液学会学術集会