研究実績の概要 |
ワクチンによる獲得抗体価の個人差に寄与する遺伝要因としてClass II HLAの多型がGWAS研究で報告されている。本研究では、先行研究でB型肝炎(HB)ワクチン抗体価とHLAアリル・SNP・アミノ酸多型について検討したコホートを用いて、麻疹・風疹抗体価と関連する遺伝要因、特にHLA多型の意義について検討した。
HBV・麻疹・風疹それぞれについて、異なるrisk/protective alleleが同定された(麻疹:HLA-DRB1*14:54は麻疹抗体価が低値と関連。風疹:HLA-DPB1*0402は風疹抗体価高値と関連。HLA-DPB1*04:01, HLA-DPB1*06:01, HLA-DQB1*06:04, HLA-DRB1*13:02は風疹抗体価低値と関連)。また、同じアリルでもHLA-DPB1*04:01およびHLA-DQB1*06:04は風疹では抗体価低値と、HBでは抗体価高値と関連しており、逆の作用を示した。重要となる抗原結合領域のポケットの位置も異なっていた。GWASで複数のコホートから報告され、HLA分子の発現量との関係が議論されているHLA-DP領域のSNPsは、重要な抗原結合領域のアミノ酸多型と連鎖不平衡にあり役割が明らかでなかったが、麻疹・風疹では有意差を認めなかった。このことから、HLAの発現量ではなく、HLAの抗原結合領域の多型と抗原の組み合わせがワクチン反応性の個人差に重要な役割を有していると考えられた。記載した以外にも、有意水準は満たさないが強い傾向を示す多型があり、症例数を増やした検討が必要である。
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