研究実績の概要 |
肝星細胞の老化関連分泌因子であるIL-8を含むサイトカインの血中濃度と肝細胞癌患者における化学療法との関連性に着目した。現在、切除不能肝細胞癌に対してはアテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法(Atezo+Bev)が第一選択として行われている。2020年12月から2022年8月にかけて、当科においてAtezo+Bevを導入した切除不能肝細胞癌38例を対象とし、治療開始前と治療開始後4-7日における血液検体を用いてサイトカイン19種類(EGF、G-CSF、GM-CSF、IFNγ、IL-1b、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12P70、IL-13、MCP-1、MIP-1α、MIP-1β、TNFα、VEGF)の血漿中濃度を測定し、治療開始後早期におけるサイトカイン濃度の変化とAtezo+Bevの治療効果や有害事象との関連について解析した。投与前と投与後4-7日後で血漿中濃度に変化のあったサイトカインを解析したところ、G-CSF(p=0.0231)、MCP-1(p<0.001)、TNFα(p=0.0024)、VEGF(p<0.001)に有意な変化が見られた。治療効果判定が行われた34例において、最良治療効果がCR/PRの群(n=14)は、SD/PDの群(n=20)に比較して治療開始前のG-CSF(2.67 vs 1.70 pg/mL, p=0.003)と治療開始後のG-CSF(9.13 vs 1.70 pg/mL, p=0.022)・MCP-1(249.84 vs 196.70 pg/mL, p=0.042)の濃度中央値が各々高かった。これまでの検討ではIL-8とAtezo+Bevの治療効果との関連性を見出すことはできなかった。しかし、血液中のサイトカイン濃度は肝臓局所における濃度変化を反映しているとは限らず、肝内局所における濃度変化を理解する必要があると考えられた。
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