研究課題/領域番号 |
20K17030
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
太田 悠木 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 研究員 (80867549)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | がん幹細胞 / 大腸癌 |
研究実績の概要 |
近年の化学療法の進歩により、切除不能消化器進行がんの治療成績は飛躍的に向上してきたが、根治治療は達成されていない。このような難治性は、化学療法耐性と腫瘍再構築能を併せもつ 「がん幹細胞」による腫瘍再発性に起因すると考えられている。本研究では、患者由来がんオルガノイド技術、ゲノム編集技術、生体機能マーカーの多色蛍光可視化とその生体イメージング技術を駆使し、イメージング解析次元と時空間分解能の向上を図ることにより、これまで未達成であった生体内における臨床がんの化学療法耐性の動態を詳細に解析する事を目的としている。本年は患者由来オルガノイドに幹細胞マーカー、休止細胞マーカー、Cre依存的蛍光レポーターの遺伝子導入を行うことにより、がん幹細胞と休止期およびがん幹細胞子孫の系譜を同時に可視化出来るシステムの開発に成功した。また、同細胞を免疫不全動物皮下に移植し、腫瘍細胞直上に生体窓を取り付ける事で、がん細胞の生きた状態での動態観察を可能とする技術を立ち上げた。これらの成果から、腫瘍増殖期におけるがん幹細胞の増殖動態や化学療法耐性、再発におけるがん幹細胞の役割を時空間的に解析する事が可能となった。次年度はこれらのシステムを用いてがん幹細胞ダイナミクスを詳細に観察するとともに、がん幹細胞の化学療法耐性獲得機構および再発のトリガーとなるシグナルの探索を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までに本研究の基盤となる蛍光可視化システムおよび観察系の確立を達成しており、同一腫瘍のリアルタイム・ライブイメージングが可能な環境を構築できている。これらの技術開発は、これまで困難であった光学・分子細胞生物学・生物物理学的な技術限界をそれぞれ克服し、統合したことによってのみ初めて可能になるものであるが、当初の計画以上に早い段階で基盤の確立をする事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発した大腸がんオルガノイドの新規ライブイメージング技術を用いて、腫瘍生着後の増殖期におけるがん幹細胞の動態および臨床で使われる化学療法を加えた際の腫瘍内細胞変遷を観察する。それにより、化学療法耐性を有する細胞の特性を見極めるとともに、その後の再発期に重要な役割を持つ細胞を特定する。その後、遺伝子操作および細胞分取、遺伝子発現動態解析によって、化学療法耐性および再発に関わる重要なシグナル経路を探索し、当該シグナルに摂動を加えることで化学療法耐性や腫瘍再発にどのような影響をもたらすかを詳細に解析する。
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