血管透過性は血管内皮細胞同士の接着によって制御されている。血管内皮細胞には、内皮特異的接着分子であるVascular endothelial-cadherinに加え、N-cadherinも発現している。これまで血管内皮細胞間接着の形成には、VE-cadherinが重要な働きをもつことが知られているが、血管透過性制御におけるN-cadherinの機能に関して不明な点が多く残されている。 本研究では、正常時および炎症時の血管透過性制御、さらには脳血管関門(BBB) の構築・維持におけるN-cadherinの機能を明らかにするため、内皮細胞特異的n-cadherin欠損ゼブラフィッシュの樹立を試みた。ゼブラフィッシュの血管内皮細胞におけるn-cadherinをコンディショナルに欠損させるため、CRISPR/Cas9の技術を用いて、n-cadherin遺伝子の両端にloxPサイトの挿入を試みたが、正常にloxPサイトが挿入された個体を得ることができなかった。現在、挿入部位を変え、再度検討を行っている。 上記解析と並行して、血管内皮細胞間接着を増強し、血管透過性を抑える働きがある低分子量Gタンパク質Rap1の生体における役割についても解析を進めた。血管内皮細胞特異的Rap1欠損マウスを作製し、解析を行ったところ、重度の肺水腫により死亡することを発見し、Rap1は肺胞毛細血管の血管バリア機能に必須の分子であることが明らかになった。現在、Rap1が透過性を制御する分子メカニズムについて解析を進めている。
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