研究成果の概要 |
食欲の増進に関与するホルモンの一つであるグレリンに関する研究を行った.グレリンは主に胃から分泌されるが,その調整機構は完全に解明されていない. 本研究では,胃の伸展刺激が,伸展受容体であるTRPV4を介してグレリンの分泌を制御しているという仮説を立てて検証を行った.その結果,肥満症例の胃ではTRPV4が広く分布していることが示された.細胞実験において伸展刺激やTRPV4作動薬の存在下では,グレリン分泌が増加したが,TRPV4阻害薬存在下ではグレリン分泌が増加しなかった. 胃に存在するTRPV4は伸展刺激を受けてGhrelin分泌を調整し,体重に影響を与える可能性が示唆された.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
近年,我が国では食生活の欧米化などにより,肥満症が増加傾向である.肥満症は,糖尿病などの生活習慣病を合併し,生命予後に悪影響を与えることは周知の事実である.「神戸宣言2018」では肥満撲滅が謳われており,肥満症の予防や治療は我が国の重要な課題となっている.本研究では食欲に関連するホルモンであるグレリンの制御機構の一端を明らかにすることができた.グレリン分泌を適切に制御することができれば「食欲」のコントロールを行うことが可能となり, 食欲を抑制することで,肥満や糖尿病など生活習慣病の予防や治療に関して,従来と全く異なるアプローチの薬剤を開発できる可能性がある.
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