研究課題
高濃度の酸素投与することにより生じた活性酸素は、肺に直接もしくは炎症性細胞を介して間接的に無気肺、肺水腫、肺胞出血、肺サーファクタントの減少、フィブリンの沈着、肺胞隔壁の肥厚、肺のコンプライアンスの低下、拡散能の低下、A-aDo2の増加の拡大を招くとされている。実際、高濃度の酸素投与の限界として、酸素濃度100%は6時間以内、80%は12時間以内、50%は48時間以内であると推奨されている。本研究の目的は高濃度酸素にさらされた肺組織の構造を超微形態学的に考察することである。10週齢の雄のC57BLマウスを100%酸素で満たしたチャンバー内で48時間飼育した後に屠殺、対照群は室内気で72時間飼育した後に屠殺した。これらマウスに対し、左心室からグルタールアルデヒドによる還流固定を行った後に肺を取り出し、凍結割断法により試料を作製、走査型電子顕微鏡を用いて組織の観察を行った。対照群の生存率が100%であったのに対し、高濃度酸素吸入群マウスの生存率は20%(8/40)と著しく低下していた。超微形態を観察したところ、高濃度酸素投与群では肺胞は虚脱し、肺胞隔壁、血管壁の著しい肥厚を認めた。また、血管腔周囲腔の拡大と急速な線維化を確認することができた。さらに、高濃度酸素吸入により肺胞が虚脱し血管壁肥厚が生じることを超微形態にて確認した。次にこれらの障害が可逆性があるかどうかについて検討を行うため48時間高濃度酸素投与を行った後に通常気に戻し経過を見たところ、この血管周囲腔の拡大は通常気に戻して24時間の時点ですでに改善していた。
1: 当初の計画以上に進展している
組織学的な検討がほぼ終了した。
遺伝子改変動物を用いた検討を行っていく。
新型コロナウイルス感染症の拡大により一時的に研究を停止していたため。
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