研究課題
咽頭上皮ではEpstein-Barr ウイルス(EBV)は溶解感染を起こし、感染細胞は死滅する。そのため、上咽頭癌発癌のためにはEBVが潜伏感染へ移行することが必須である。オートファジーは細胞質成分をリソソームで分解することで細胞内の恒常性を維持しているが、ウイルスなどの病原体を排除する機能も有する。しかし、EBVが潜伏感染状態の細胞内では潜伏感染抗原に対する免疫応答を何らかの機序で回避しつつ、恒常性が維持されている。本研究では、オートファジーが潜伏感染の成立に寄与しているのではないかという仮説のもと、オートファジーの感染細胞における役割、および発癌過程に及ぼす影響を究明する。前年度までにEBV潜伏感染細胞であるEBfaV-GFPはtetradecanoyl phorbol acetateとbutyric aciedを添加することで溶解感染を惹起されること、この細胞をクロロキンやイベルメクチンで処理し、オートファジー活性の変化が溶解感染に与える影響を検討すると、溶解感染を誘発したEBfaV-GFPにクロロキンでオートファジーを阻害したものでは著明に細胞が死滅することを確認している。本年は、上咽頭癌の発生する上皮細胞において前年度までに検証した現象が起こるかを確認するため、EBV潜伏感染上皮細胞を作成した。EBV受容体であるCD21を遺伝子導入した293細胞を作成し、組換えGFP-EBVを感染させた。これにより作成しEBV潜伏感染上皮細胞を用い、EBV感染により誘導されるオートファジーが溶解感染および潜伏感染に与える影響を検討し、オートファジーを調整することで溶解感染を誘導できるか、潜伏感染様式をⅡ型からⅢ型、すなわち免疫原性の高い様式へとスイッチさせることができるか検討した。また、EBV潜伏感染モデル細胞を免疫不全マウスに接種し検討したがマウスへの生着は成立しなかった。
すべて 2021
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Oncol Lett.
巻: 21 ページ: 385
10.3892/ol.2021.12646