老人性難聴は1500万人を超す罹患者を持ち、聴力低下に加え社会的影響も甚大な疾患であるが、病態解明や根本的治療法の開発は進んでいない。一方、酸化ストレスなどで誘導される老化細胞の蓄積が加齢性疾患の発症に強く関与することが明らかとなってきた。本研究では老人性難聴における細胞老化の意義について検討した。当初老人性難聴の進行に老化細胞の経時的蓄積が関わると推測したが、実験の結果、老化細胞は若年マウスのらせん神経節細胞に発現著明であり、細胞老化がむしろストレスによる組織の変性を防ぎ、組織の修復を促進する方向に働くのではと考えられた。今後の研究で内耳の細胞老化の機能、聴覚に与える影響の解明が望まれる。
|