研究課題/領域番号 |
20K18296
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
井上 彰子 東邦大学, 医学部, 助教 (40770475)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シェーグレン症候群 / 病原性T細胞 |
研究実績の概要 |
これまで我々は、T細胞分化に重要な働きをする核内転写制御因子Special AT-rich sequence binding protein-1 (SATB1)を血球系細胞特異的に欠損する SATB1cKOマウスを用いて、免疫寛容成立のメカニズムを解析してきた。SATB1cKOマウスは胸腺での中心性免疫寛容の破綻がおこり、生後早期からシェーグレン症候群(SS)様の唾液腺炎、涙腺炎を呈し、加齢と共に全身性エリテマトーデス(SLE)様の全身性自己免疫疾患を発症することが明らかとなっている。本研究では、生後早期よりヒトSS病態を呈し、頸部リンパ節にSSの発症原因となる病原性T細胞が存在するSATB1cKOマウスを用いて、SS発症初期病態形成機序を明らかにすることを目的とした。SATB1cKOマウス頸部リンパ節T細胞を生まれつきリンパ球が欠損するRag2-/-マウスに移入すると、SS様の唾液腺分泌機能障害が発症する。このマウスの唾液腺に浸潤しているT細胞を解析すると、CD4+T、CD8+T細胞のみならず、CD4+CD8+ T細胞の3分画が検出された。SATB1cKOマウスでは、胸腺でのT細胞分化の異常により、通常は抹消に存在しないCD4+CD8+ T細胞が抹消血やリンパ節中に検出される。興味深いことに、SATB1cKOマウス頸部リンパ節T細胞移入Rag2-/-マウスの唾液腺では、CD4+CD8+ T細胞の割合が同じマウスの頸部リンパ節に存在するCD4+CD8+ T細胞の割合よりも高かった。また、これらの細胞はCD4+T細胞やCD8+T細胞よりもインターフェロンγ(IFNγ)陽性の細胞が多かった。これらの結果からSATB1cKOマウスにおけるSS発症初期病態形成には、CD4+CD8+ T細胞が関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度はコロナウイルス緊急事態宣言に伴う飼育制限により動物の繁殖と実験が遅れた。しかし、Rag2-/-マウスへの病原性T細胞の移入実験は順調に進み、現在は頸部リンパ節中のT細胞や、唾液腺に浸潤したT細胞のサイトカイン産生能を調べている。またC57BL/6ヌードマウスに病原性T細胞を移入する実験も進めており、こちらは、B細胞が存在する条件下での病原性T細胞動態が観察できる。これまでの検討では、SS様の唾液腺分泌機能障害は確認できているので、Rag2-/-マウスでの発症との違い等を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降解析予定である、唾液腺組織内で増殖するT細胞のT細胞受容体レパトア解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス緊急事態宣言に伴う飼育制限により動物の繁殖と実験が遅れたため、マウス飼育費が予定より減じた。次年度以降はレパトア解析が次世代シークエンサーを用いた実験を予定しているため、高額になると予想される実験費用に充てることにした。
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