研究実績の概要 |
本研究計画は、味蕾幹細胞の3次元培養技術である「味蕾オルガノイド」、および味細胞のトランスクリプトーム解析を軸に、味細胞の機能的極性形成メカニズムの解明を目指すものである。現在までに、共焦点レーザー顕微鏡下での単一オルガノイドコロニー分取方法および味細胞トランスクリプトーム解析方法の検討を行ってきた。特に、トランスクリプトーム解析に関しては、令和2年度に、特定の味細胞をGFPでマーキングした遺伝子改変マウスの舌前方部(茸状乳頭)および後方部(有郭乳頭)味蕾から、GFP陽性の味細胞をFluorescence Activated Cell Sorting(FACS)を用いて分取し、単一味細胞の網羅的遺伝子発現解析を行うことに成功した。過去の研究から、舌前方部と後方部では、発生学的な器官の成り立ちの違いや、味覚応答性の違いが示唆されているが、その差を生み出す遺伝子発現の差異に関しては解析が進んでこなかった。今回用いたFACSとBD Rhapsodyを組み合わせたハイスループットなトランスクリプトーム解析により、茸状乳頭と有郭乳頭それぞれにおける特異的な発現遺伝子を見出すことが可能となった。以上の結果を学術論文としてまとめ、責任著者として発表した(Yamada, Takai et al., BBRC, 2021, in press)。その他に、味蕾オルガノイドの成長に影響を及ぼす因子や、味細胞の分化・増殖と全身の栄養状態について、これまでに得られた知見の一部を総説としてまとめ学術誌に寄稿した(髙井, 重村, 化学と生物, 2021 59巻3号)。また、本研究で得られた実験結果の一部を、18th International Symposium on Olfaction and Taste (ISOT2020)、第62回歯科基礎医学会大会にて発表した。
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