研究実績の概要 |
ビスフォスフォネート(BP)製剤や抗RANKL抗体などの骨吸収抑制薬の使用患者において、侵襲的歯科治療をきっかけに難治性の顎骨壊死(Medication-related Osteonecrosis of the Jaw, MRONJ)が発生することが報告されている。2016年に顎骨壊死検討委員会が発表したポジションペーパーでは、MRONJの発症リスクとして抜歯のみならず、過大な咬合力、不適合義歯およびインプラント治療など補綴学的に重要な症状・治療法についても重大な局所因子としている。しかしながら、ポジションペーパーでは、これらのリスク因子は医学的根拠に基づいて確定されたものではないと述べられており、実際、MRONJの発症機序は完全には明らかにされていない。本研究では、MRONJ発症に関与が疑われている過剰な咬合力等の不適切な荷重に焦点をあて、in vivoおよびin vitroによる病態解析を目的とした。 最終年度は、ヒト間葉系幹細胞から、3次元培養が可能な骨様細胞集塊を作製した。この骨様細胞集塊を使用して、静水圧刺激による過剰なメカニカルストレスを与えるin vitro骨壊死モデルの解析を実施した。その結果、静水圧刺激により骨様細胞集塊から、乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase, LDH)が検出され、そのLDHはBP処理と静水圧刺激を組み合わせることにより、有意な増加が認められた。以上より、MRONJ発症と不適切な荷重に関して、in vivoおよびin vitroによる病態解析が可能となるモデルが構築できた。
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