最終年度である今年度は、これまで得られた感情尺度の妥当性検証の研究成果を総括するため、論文執筆および論文出版発表を中心に展開した。 開発された医学教育感情尺度により、Problem-based Learning(PBL)で臨床推論を学習する医学生4年生の達成感情を評価可能であることを示し、BMC Medical Education誌に発表した。また、医学教育感情尺度で評価される日本人医学生の達成感情を文化的に考察した論文を英文誌に投稿し査読中である。さらには、Virtual Reality(VR)を用いた医学生5年生を対象とした被ばく医療シミュレーション教育、そして救急医療に従事する多職種チームによる新型コロナウイルス感染症対応シミュレーション教育で評価された達成感情の論文2編についても英文誌に投稿し査読中である。 また、感情尺度の妥当性検証と並行して実施していた感情に関連する尺度である動機づけ尺度について、PBL学習環境での妥当性を検証し、その成果を欧州医学教育学会の関連誌であるMedEd Pulish誌に発表した。また、医学教育での筆記試験環境における医学生の受験行動(具体的には、早期退室)と学習成果との関連に関する検討も実施し、その結果を医学教育学会雑誌に発表した。 4年間の研究期間を通じて、卒前医学教育及び卒後医学教育での多岐にわたる学習者段階及び学習環境でのデータ収集・解析を実施し、各々のセッティングにおいて感情尺度のデータと学習・研修成果との関連が示され、医学教育感情尺度の妥当性検証のための十分な論拠を蓄積することができた。さらには、生体センサーを用いた感情測定のフィージビリティー研究を実施し、客観的な生体データで感情尺度の主観性を補完することで学習者の感情を多角的に評価する医学教育研究手法を開拓し、医学教育での感情研究分野の学際的探究の発展性を見出すことができた。
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