研究課題/領域番号 |
20K19230
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研究機関 | 京都光華女子大学 |
研究代表者 |
諏澤 宏恵 京都光華女子大学, 健康科学部, 准教授 (60531142)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ソーシャルキャピタル / 地域脆弱性 / Vulnerability / Covid-19 / 世代間交流 / 高齢ボランティア / 保育 / 公衆衛生 |
研究実績の概要 |
1. 本研究は、ソーシャルキャピタル(以下SC)の生成過程について概念整理を目的とする。とりわけ、本研究では高齢ボランティアが次世代の子どもを地域で見守り育てる「学童保育」場面の観察を通して、SCの成立過程を詳細に研究することを目指している。しかし、コロナ禍のもと、予定の観察場面は実施できず、今年度は、「COVID-19蔓延時の状況」に着目し、感染第1波の時期に、文献レビューを行い論文発表した(諏澤宏恵.(2021).COVID-19における地域脆弱性(Vulnerability)とソーシャルキャピタル(社会関係資本)の関連:文献レビューをもとにした検討(Regional Vulnerability to COVID-19 and Social Capital: Implications from the Latest Literature)京都光華女子大学研究紀要,58)。その結果、都市型SCの米国・シカゴ市では、リテラシーの低い地域において、COVID-19死亡率が高かった。信頼を寄せあい、互いに利益を生むSCを創るには、目的を共有し、正しい知識や情報を得ることが重要となることが明らかとなった。
2. 本研究に先立ち実施したgenerativity獲得過程に関する調査結果をもとに、SC獲得過程の再検討を行い、結果について発表し、関係する研究者からの助言を得た。(諏澤宏恵(2021).放課後学習支援に従事する中高年ボランティアの世代性形成段階とその特徴, 第79回日本公衆衛生学会総会,ポスター発表(Web))
3. 当初の予定に加えて、コロナ禍というネガティブな「状況」がソーシャルキャピタルにどのように影響するのか、心理面への影響や向健康行動に着目し、パイロット調査として、高齢保育ボランティアの地域民生児童委員を対象に、質問紙調査を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のもと、予定していた高齢ボランティアが実施する学童保育場面の観察調査は実施できていない。学童保育実施側の判断によりボランティア関与の制限や、ボランティア自身の健康への憂慮から、観察場面が実現されず、調査実施に至っていない。そのため、現在、観察研究が可能な機関や場面を検討し、NPOが実施する世代間交流プログラムへの介入調査の実施に向け調整しているところである。 また一方で、COVID-19という負の状況に着目することで、SCの本質に迫ることができると考え、先行研究を収集し文献検討を行っている。その結果、上記の結論(人々が集う目的を可視化し共有すること,COVID-19等懸念される結束に影響する負の要因に対する正しい知識や情報を得ること)がSC醸成のカギとなることが明らかとなった。これを踏まえ、本研究対象や調査方法を改変し、ソーシャルキャピタルをアウトカム(結果変数)とし、ヘルスリテラシーや生活習慣(健康行動)を独立変数とする質問紙調査を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定を改変し、コロナ禍というネガティブな「状況」に着眼し、ソーシャルキャピタルの生成過程を詳細に分析する。 1.質問紙調査(予備調査):高齢ボランティアの心理面への影響については、今年度に引き続き質問紙調査を実施する。また、学童保育を受ける児童への影響については、学校適応等に着目し、インタビューまたは学校教員への質問紙調査を実施予定である。 2.観察研究:NPOが実施する世代間交流プログラムの場面を対象に、高齢保育ボランティアと参加児童の向健康行動(コロナ感染予防行動)場面を取り上げ、観察研究を行う。 また、関連学会での発表や論文誌上での意見交換を通じて適宜修正を行いながら、概念整理を進める。 3.これまでの拙稿をもとに、高齢家族(祖父母)が行う次世代(孫)育児との比較を行い、SCとgenerativityの生成・獲得過程の相違について概念比較を行う。 4.1~3の結果および、先立って実施した高齢ボランティアのgenerativiy獲得過程の結果を統合し、次世代育児におけるソーシャルキャピタル形成のレベルを表す尺度の生成に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
人を対象とする観察研究を予定していたが、コロナ禍において、今年度は予備調査として質問紙調査を実施した。そのため、謝金支出や備品購入支出額が予定を下回った。また、学会発表等に伴う旅費についても上記同様の理由によりWeb開催となり、支出がなかった。次年度は、COVID-19蔓延に伴う社会情勢の変化や、フィールドの受け入れ状況にも若干の変化がみられるため、タイミングをみて本調査を開始し、それに伴い予定通り経費を執行する見込みである。
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