腰部の可動域や運動における速度などをVRを用いて計測可能なシステムを開発した.VRのヘッドマウントディスプレイやコントローラーには加速度計が内蔵されている.画面に表示されるターゲットをコントロールで触りながら,体幹を動かすことで可動域を測定することとする.さらに,ランダムに出現する物体にリーチ動作を行うことでリアクションタイムを算出することも可能である.その評価内容に応じて身体を動かす範囲を決定し,VR上のゲームを通じて運動療法を実施可能なプログラムの開発をした.このプログラムでは,最大可動域にて痛みや恐怖心が出現することもあるため,VR運動療法は,可動域測定時の80%にしかターゲットが出現しないように設定して行う. 慢性腰痛患者に対して,VR運動療法を実施した.VR中の痛みや運動恐怖は惹起されなかった.仮説通り,可動域評価時に得られた可動範囲の80%で実施することで,運動に対して恐怖を惹起せ実施可能であった.また,慢性腰痛患者は,運動が継続できないことも問題の1つであったが,VRの特性上,ゲーミフィケーションのように楽しく運動を実施することが可能であったため,非常に有益であると考えられる.さらに,慢性腰痛患者にて実施した結果,疼痛強度だけでなく,恐怖や破局的思考も軽減が認められた.また症例が就労者であり,慢性腰痛によって生産性低下も認められていたが,改善が認められた.この効果は,介入後2ヶ月後まで,継続されていた.
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