研究課題/領域番号 |
20K19394
|
研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
鳥山 実 日本福祉大学, 健康科学部, 助教 (10734551)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 前十字靱帯 / 協調性 / 動作解析 / リハビリテーション |
研究実績の概要 |
本研究は多関節協調運動の程度が膝前十字靱帯(ACL)損傷の力学的リスクに及ぼす影響を検証し,ACL損傷予測システムの基盤を構築することを目的としている。 本年度は昨年度から引き続きACL損傷者における多関節協調運動運動の特性を健常者と比較,検証を行った。ACL損傷者と健常者を対象に3次元動作解析装置(VICON NEXSUS)と表面筋電計(Delsys)を用いて片脚スクワット動作の計測および解析を行った。現在のところ健常者24名とACL損傷者25名の計測が完了しており,健常者,ACL損傷側下肢,反対側下肢において閉眼条件でACL損傷リスクとなる膝関節外反モーメントが増大し,さらに反対側下肢では下肢関節運動の変動性の開眼閉眼比が増加していた。このことはACL損傷者は反対側下肢においてもACL損傷のリスクを有しており,それに対して視覚による代償が過剰に働いていることを示唆している。また表面筋電図では閉眼時に健常者に対してACL損傷側,反対側下肢で大腿四頭筋-腓腹筋の同時収縮指数が増加していた。これは閉眼時に脛骨の前方剪断力を増加させる筋収縮パターンを呈していることを示しており,下肢関節運動の変動性の増加とともにACL損傷リスクが高まっている可能性があることが明らかとなった。 また今後のコホート調査に向けたマーカーレスモーションキャプチャによる関節角度の推定システムについては解析プログラムについてはほぼ完成しており,現在既存の三次元動作解析との精度の比較,検証を行っている。さらに各課題動作においてのトラッキングおよび角度算出の誤差の有無と,その補正方法の検討に取り組んでいる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
過去の報告から計算したサンプルサイズに対して,ACL損傷者および健常者ともに目標症例数に達しつつあるが,一方でACL損傷者と健常者との男女比が異なってことや,体格差が生じているため,体格がマッチした健常者の計測を進めてく必要性が生じている。また全身運動における膝関節トルクへの貢献の解析は昨年度中に完了予定であったが,現在プログラムの検証段階であるため,解析には遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度より研究代表者の所属先がデータ計測を行っている研究協力施設へと異動となったため,目標症例数は速やかに担保できる見込みである。症例数を集めつつデータ解析も継続して行い,速やかに統計解析と論文作成に取り組み,成果を公表していく予定である。また将来的なコホートでの調査に向け,マーカーレスモーションキャプチャ手法の精度検証も引き続き進めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウィルス感染拡大の影響で緊急事態宣言の発令などがあったことから,県外への移動を必要とする研究協力施設への訪問回数が減少したため,当初予定していたよりもデータ測定のための旅費に使用する額が減少した。また同理由で学会参加に伴う旅費として使用する額も少なかった。今後の論文投稿にかかる英文校正費や投稿費,さらにマーカーレスモーションキャプチャでの動作解析手法の確立に向けた費用に充てる見込みである。
|