研究実績の概要 |
慢性腎臓病は、進行すると末期腎不全(透析導入)や心血管死亡などの重大な転帰をもたらす。中でも、糖尿病に起因する慢性腎臓病(糖尿病性腎臓病:DKD)は、20年近く血液透析導入原因疾患の第1位であり、現在もDKDによる透析導入患者数は高いレベルを維持し続けている。このため、患者の福祉向上に加え、医療経済的観点から、DKDの発症予防/進行抑制は喫緊の課題として、様々な試みがなされているが、未だ十分とは言い難い。 本研究では、「DKD発症前からの習慣的有酸素運動によって、骨格筋の量・質の低下が抑制され、かつ骨格筋からのマイオカイン産生が促進する。このマイオカインが腎臓に作用し、DKDが予防される。」との仮説をヒトに極めて近い病態を示す2型糖尿病ラット(SDT fatty rat)を使用して検証することを目指している。 2021年度、SDT fatty rat において、糖尿病性腎臓病(DKD)の進行が、トレッドミル運動により、抑制されたことを明らかにした。このため、トレッドミル運動により、骨格筋由来のマイオカインの分泌が促進され、筋腎連関を介して、腎保護的に作用した可能性について、検証した。初めに、既知のマイオカン(インスリン様成長因子-1, IL-6, 脳由来神経栄養因子,Irisin)について、血清を使用し測定したが、運動により有意な増加を示すマイオカインは認めなかった。さらに、マイクロアレイにより解析を試みたが、骨格筋の構造蛋白にのみ軽度の変化を認めるに過ぎない結果であった。そこで、2022年度は、骨格筋の代謝性変化を網羅的に解析する。
|