研究課題
糖尿病に起因する慢性腎臓病(糖尿病性腎臓病:DKD)は、多くの血糖降下薬が開発されているにも関わらず、20年近く血液透析導入原因疾患の第1位であり、現在もDKDによる透析導入患者数は減少することなく、高いレベルを維持し続けている(日本透析医学会統計)。このため、DKDの発症予防および進行抑制は喫緊の課題として、様々なDKDの予防や治療が試みられているが、未だ十分とは言い難い。この原因として、DKDが、高血糖に加え、肥満、高血圧、高脂血症など、様々な生活習慣病により影響を受けるため、血糖を下げただけでは、DKDの発症予防および進行抑制が困難な点があげられる。さらに、糖尿病患者の多くが、動脈硬化が強く、身体・認知機能が低下した高齢者であり、積極的な治療が、合併症や副作用を生じ、患者の不利益となることも問題となっている。このことは、薬剤のみに頼るのではなく、患者の生活の質(QOL)や日常生活動作(ALD)を考慮したDKD対策が重要であることを示している。近年、習慣的有酸素運動が肥満の改善や、血圧を低下させる等により、腎臓病へ好影響を与える可能性が指摘され、注目されている。運動は、骨格筋量の減少や筋力低下(サルコペニア)を予防し、患者のQOLやADLの維持に効果があるため、2型糖尿病のようなサルコペニアを高率に発症する疾患において、運動がサルコペニア予防のみならず、DKD予防にも効果的であれば、その社会的意義は極めて大きい。そこで、サルコペニアと腎臓病を発症する2型糖尿病動物を使用し、2型糖尿病による腎臓病に対する習慣的走運動の効果を検証した。その結果、運動は、血圧を低下させ、尿アルブミン、尿L-FABPは低下し、腎組織障害(糸球体病変、尿細管病変)の進行を抑制した。同時に、運動により筋力低下や筋委縮が軽減された。今後は、腎臓病に効果的なより良い運動療法を明らかにしていきたい。
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