これまでに多くの研究によって、姿勢制御における大脳皮質の関与が証明されてきた。本研究では、近年、動的課題に対しても適用範囲が広がった脳波計測によって、バランス要求の異なる条件間の脳活動の違いを検証した。数十秒にわたる脳波の律動と、十ミリ秒スケールの動的な変調を区別して検討することで、安定した立位に置いても姿勢動揺に合わせて脳活動が変調していることを示した点は、ヒト姿勢制御の神経機序に関する新しい学術的知見になると思われる。今回、明らかにした知見をもとに、ニューロモデュレーション法の適用判断に応用を進めることで、立位バランス障害の治療介入という側面において社会的意義を持つものになると期待できる。
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