本研究の目的は、地域在住高齢者における強度別身体活動とMRIで測定した海馬を始めとした脳の解剖学的構造の関連性を明らかにし、認知症の予防方法を検討することである。 1年目は、「十日町コホート調査」のベースライン調査で収集した加速度計データと脳MRI画像の解析を行った。本研究の主要なテーマである地域在住高齢者における強度別身体活動と海馬体積の関係を身体活動の共依存性を考慮した分析を用いて評価し、中高強度身体活動と右海馬体積に正の関係があることを明らかにした。この研究結果を国際医学雑誌: Journal of Epidemiologyに発表した。 2・3年目は、同コホート調査に参加する研究者と共に脳構造体積・認知機能に関連する心理的・身体的・環境要因や、身体活動とそれらの関係について解析を行った。まず、高齢者の余暇活動について、活動の種類が多いことと総海馬体積・総灰白質体積に正の関連があることを明らかにし、この研究結果をFrontiers in Aging Neuroscienceに発表した。また、逆境的小児期体験が高齢者の前帯状皮質の体積と正の関係が、海馬、扁桃体の体積と負の関係があることを明らかにし、Child abuse & neglectに発表した。さらに、媒介分析を用いて、「感謝の気持ちを持つこと」が、認知機能と正の関係があり、この関係を扁桃体の体積が媒介していることも明らかにし、Archives of Gerontology and Geriatricsに発表した。同じく媒介分析を用いて、灰白質体積が高齢者の歯の欠損と認知機能の低下の関係を媒介しているも明らかにし、The American Journal of Geriatric Psychiatryに発表した。 また、3年目には同コホート調査の追跡調査を実施し、MRI検査およびその検査結果のデータセットの作成を行った。
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