研究課題/領域番号 |
20K19655
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
北村 祐貴 金城学院大学, 薬学部, 助教 (80802553)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | サルナシ / Actinidia arguta / パーキンソン病 / プロテオミクス解析 / 二次元電気泳動 |
研究実績の概要 |
難治性の神経変性疾患であるパーキンソン病は、国内および世界中で増加し続けている。パーキンソン病の根本的治療法は確立されていないため、発症を予防することが重要な課題である。パーキンソン病の発症原因の一つとして、活性酸素種によるドパミン作動性神経細胞の細胞死があげられる。これまでに、無毛にした小ぶりなキウイフルーツに似た果実であるサルナシ(Actinidia arguta)の果汁がドパミン作動性神経細胞において、過酸化水素が誘導する細胞死を抑制することを明らかにした。本研究では、パーキンソン病モデルマウスを作製し、サルナシ果汁の経口投与が発症予防に効果を示すかを検証する。さらにモデルマウスの中脳黒質組織におけるタンパク質の網羅的発現量解析を行い、発症予防に関与しているタンパク質を明らかにする。 本年度は1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine (MPTP)を用いてパーキンソン病モデルマウスを作製した。MPTP投与によって生じる運動機能障害はポールテスト、カタレプシーテスト、ビームウォークテストを用いて評価し、ドパミン作動性神経細胞数はtyrosine hydroxylase (TH)抗体を用いた免疫組織化学染色法とウェスタンブロット法にて評価できることを確立した。サルナシ果汁をMPTP投与前から経口摂取させた果汁+MPTP処置群を作製し、これらの方法を用いてサルナシ果汁のパーキンソン病発症に及ぼす影響を検討した。その結果、果汁+MPTP処置群では、MPTP処置群と比較して運動機能障害およびドパミン作動性神経細胞数の減少が有意に抑制され、MPTP未処理群と同等であった。以上のことから、サルナシ果汁の摂取はパーキンソン病の発症予防や増悪抑制に寄与する可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、サルナシ果汁の予防的投与はMPTPが誘導する運動機能障害やドパミン作動性神経細胞の減少を抑制することを明らかにした。さらに、パーキンソン病発症予防に関与したタンパク質を明らかにするために、蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動(2D-DIGE)法を用いたタンパク質の網羅的発現量解析に着手した。中脳黒質組織からタンパク質を抽出後、三重大学医学部にて2D-DIGEおよび統計解析を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響により県外への移動が制限されたため、本年度での実施が困難になった。現在は使用するタンパク質の抽出は完了しているため、県外への移動が可能になり次第すみやかに実験を遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動(2D-DIGE)法を用いてタンパク質の発現量変化を網羅的に解析する。有意差のあるスポットについては、質量分析装置(MALDI-TOF-MS/MS)とデータベースを用いてタンパク質を同定する。さらに、免疫沈降法を用いたheat shock 70-kDa protein 1(Hsp70.1)の酸化損傷量の解析に着手し、酸化的損傷に対するサルナシ果汁の効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動(2D-DIGE)を行うための蛍光色素試薬の購入を本年度中に予定していたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、本年度中の三重大学医学部での実験が困難になった。蛍光色素には有効期限があり実験直前に購入する必要があるため、その費用分等を次年度に繰り越した。
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