研究実績の概要 |
サルナシ(Actinidia arguta)は、毛の無い小ぶりなキウイフルーツに似た果実であり、ビタミンCやビタミンE、ポリフェノール類などが豊富に含まれている。これまでに、サルナシ果汁の経口摂取が、1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine(MPTP)誘導型パーキンソン病モデルマウスにおいて、MPTPが誘導する運動機能障害およびドパミン作動性神経細胞の減少を抑制することを明らかにしている。また、サルナシ果汁の酢酸エチル抽出物には過酸化水素が誘導する細胞傷害性を抑制する抗酸化作用をもつ天然化合物が存在することを明らかにした。今年度は、この酢酸エチル抽出物に含まれる物質を明らかにするために、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて分離・精製を行い、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS/MS)を用いて物質の同定を行った。その結果、酢酸エチル抽出物には、細胞傷害性を抑制する複数のポリフェノール類が存在することが明らかになった。同定されたポリフェノール類がパーキンソン病モデルマウスにおいても有効な予防効果を示すかは今後検討が必要である。本研究によって、サルナシ果汁の経口摂取がパーキンソン病の発症予防効果や増悪抑制に寄与する可能性を見出し、その有効成分となりうる物質を明らかにした。
|