研究実績の概要 |
振動覚・温覚を全身に提示する技術の確立を目指して研究に取り組んだ.これらの感覚は,ユーザが身に着けたインピーダンス整合, あるいは,音響パワー変換の機能を備えたパッシブなデバイスに空中超音波を照射することで実現される.提示対象部位は手から前腕部に限定して研究を進め,最終年度までに以下の成果が得られた. (1)手に対する振動覚・温覚の提示手法の確立:メッシュ状の吸音特性を備えたグローブを着用した手に超音波を照射することで,振動覚と温覚を提示する手法を確立した.温覚については,超音波の照射パターンを変えることで,温かさだけでなく,涼しさも提示できることも実証した.また,圧力を増幅する指輪型のパッシブデバイスを製作し,これに超音波を照射することで素手に直接超音波を照射するよりも大きい圧力を提示できることを実証した. (2)前腕部に対する振動覚・温覚の提示手法の確立:ある程度の膨らみを持たせた布を前腕部に接触させて,これに超音波を照射することで振動覚を提示できることを実証した.温覚については,提案手法に適した素材を調べた.人肌と等価な物理特性を備えた構造体を製作し,この上に異なる種類の素材を配置して,超音波照射時の素材表面と構造体内部のヒトの温度受容器と等価な位置での温度変化を測定して検証した. また,当初想定していなかった以下の成果も得られた. (3)二次元音場のリアルタイム計測法の確立:超音波の照射されたメッシュスクリーン表面をサーモカメラにより熱画像としてリアルタイムに可視化する手法を確立した.この手法はメッシュを動かすことで容易に三次元分布を把握することもできる.提案手法の有効性は,構築した物理モデルと実験の比較により確認した.
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