研究課題/領域番号 |
20K19900
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
谷口 彰 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (70831387)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 場所概念 / 能動探索 / 能動学習 / 確率的生成モデル / 教師なし学習 / 自律移動ロボット / 記号創発ロボティクス |
研究実績の概要 |
本研究では,人間の生活環境で動作するロボットが,環境中に存在する様々な場所の概念や語彙を自律的・能動的に探索し学習する手法の実現に取り組む.ロボットは環境を探索するなかで,人から発話された言語情報や,その位置,画像といった場所に関するマルチモーダルデータを取得できる.ロボットの能動的な探索により,多大な作業負担を要するロボットの学習用データの収集を人手に頼らず実現できることが期待される.さらに,ロボット自らが不確実性を減らすように意思決定をすることで,学習や推論における性能向上が期待できる. 当該年度の実績として,(1)物体の片づけタスクや探索タスクのための場所概念を用いた確率的プランニング、(2)複数環境における地図や場所概念の知識転移に関して,複数件の国際学術誌への採録や学会での発表を行った. (1)では,モデルの尤度が最も高くなる位置に移動することで,学習した場所概念によりサービスタスクにおける能動的意思決定を実現できることを示した. (2)では,確率的生成モデルの事前分布として複数の環境にわたって共有される変数を導入することで,部分的な観測情報からでも知識を転移し補填できることを示した. この他に,知覚や学習に関わる能動的意思決定において計算論的神経科学で提唱されている自由エネルギー原理や能動推論について調査した.また,ナビゲーションや空間認知に関わる脳部位である海馬体の機能や構造を参照することでモデルやアルゴリズム構築のための知見を得た.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究の進捗状況に関しては,上記の研究実績より,おおむね順調に進展していると言える. 複数環境に渡って汎化された知識は,ロボットが新規な環境におかれた際に,探索や学習を効率良く進めるための良い事前知識となることが期待される. これらの研究成果を基に,今後の研究を推進していく.
|
今後の研究の推進方策 |
場所概念形成の確率的生成モデルにおける確率推論に基づく能動探索、能動学習のアルゴリズムに対して得た研究成果を学術誌に投稿する準備を進めている. 今後は,提案した場所概念形成のための確率的生成モデルに基づき,能動探索のための確率推論アルゴリズムの拡張および実世界適用に取り組む予定である.また,より高精度な能動学習手法の構築のために,自由エネルギー原理に基づく能動推論と,提案した情報理論的尺度に基づく確率推論の能動探索アルゴリズムとの数理的な関係性について引き続き検討する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】コロナウイルス禍の影響により,学会や研究会がオンライン開催となったため,旅費やその他の支出額が抑えられた. 【使用計画】次年度以降もコロナウイルス禍の影響は続くことが予想されるが,新しい生活様式に則した実験計画や実験環境の構築を進める予定である.そのための物品費として使用する.また,社会情勢や状況を鑑みて現地開催や対面での学会や研究会への参加を行う予定であり,そのための旅費として使用する.その他,当該研究課題に関する調査や議論のための学会や研究会への参加・研究発表に関して学会参加費を計上する.また,論文投稿料,および翻訳,英文校閲料をその他費用として使用を計画している.
|