研究課題
若手研究
次世代原子時計の候補の一つとして期待されている『分子イオン時計』の実現に貢献する分光実験を目指し、理化学研究所の極低温静電型イオン蓄積リングを用いた冷却分子イオンビームの実験を遂行した。当初予定していたCaH+の実験はイオンビーム生成の確認のみにとどまったが、同じ質量を持つArH+を用いたテスト試験を実施し、500秒のイオン蓄積に成功した。これによって、CaH+イオン蓄積の実験パラメータが決定された。また、本分光実験に不可欠な低ノイズの高速中性粒子検出器の開発にも成功した。さらに、他のイオン蓄積・分光実験を通じて、実験室プラズマにおける状態分布や孤立系における輻射冷却過程の理解が大きく進んだ。
原子分子物理学
本課題の成果によって、CaH+の分光実験の道筋がつけられた。今後、分子イオン時計の実現に向けて最も重要な振動遷移波長の分光情報が得られるものと期待される。また、本課題で整備された検出器は、C2-,N2O+など他のイオンの分光およびイオン蓄積実験に活用され、当初予定していなかった知見が数多く積みあがっている。本知見は、このような二原子分子、三原子分子の長時間ダイナミクスにのみ現れる特異的な効果を検証する、より野心的な研究課題へと引き継がれている。