研究課題/領域番号 |
20K20405
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
安藤 昌也 千葉工業大学, 先進工学部, 教授 (70513729)
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研究分担者 |
伊藤 泰信 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40369864)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 人間中心設計 / 文化人類学 / 人工知能 / システム設計 / 設計思想 |
研究実績の概要 |
COVID-19の影響はあるものの、これまでの研究成果に基づいた発表や新たな研究に向けたブレイクスルーを得られた。実施項目は、大きく3点を実施した。 【実施事項1】ヒューマインタフェースシンポジウムにおいて、「人工知能によるシステムがもたらす人間中心設計の概念変化」と題する発表をおこなった。多くの研究者と有意義なディスカッションをおこなうことができた。特に、ヒューマンインタフェース研究者からは、現時点では人工知能への過度な期待があり、実際のシステムが実現できることとのギャップの問題を指摘された。ヒューマンインタフェース学会からは、当該発表に対して論文誌への投稿を推奨する「推薦論文」として選ばれた。 【実施事項2】フィールドワークでは、自動車部品メーカーにおいて人間中心設計・UXデザインに基づく2つのプロジェクト(主に企画立案)に参与し、その過程を観察した。期間は、2021年7月から22年3月の計15回。この過程で、現状のユーザーの状況と作り手の”願い”とのギャップでアイデアが縮小する様子が観察された。今後分析を深める予定である。 【実施事項3】多元的デザインをテーマにした勉強会を開催した。特にデザイン人類学や現象学的な視点でデザインを進めておられる研究者および実践者7名を招いてオンラインで実施した。昨年度も同様の勉強会を実施したが、今年度はさらに多元的というキーワードで、さまざまな議論のつながりを理解するきっかけとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度もCOVID-19による大学入構禁止措置および海外渡航の禁止など、引き続き研究計画の見直しによる影響があった。そのような中、企業の協力を得てオンラインではあり、かなり限定された範囲ではあるが、半年間に渡りプロジェクトに参与できたことは大きい。当初計画では、研究成果を踏まえたAI技術者を交えた検討会の実施を計画していたが、この準備が遅れている。これは全体計画の遅れに伴うものであるが、オンラインが続き推進体制を維持できなかったことが原因である。来年度には実施できるよう推進する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、大きく3つを予定する。 【1:これまでの成果の取りまとめと発表】 今年度は前半までに取り組んだ研究内容を発表することで、議論を深める機会を得られた。2022年度では国際会議での発表を予定している。また、2021年度実施した企業プロジェクトの観察で得られた内容をまとめるなど、成果の発表に力を入れる予定である。 【2:文化人類学・人間中心設計との合同研究会の実施】 これまでに数回実施してきた研究会であるが、いずれも人間中心設計側での議論が中心となっていた。文化人類学の研究者を主体とした研究会を実施する予定である。また、当初研究計画にもあるように、AI技術者との議論を促進するため独自の研究会の定例的な実施の可能性について検討し準備を進める。 【3:関連研究領域・異分野との議論】 文化人類学ではデザイン人類学の議論が深まりつつある。密接に関連していることから、2021年度は合同の研究イベントの検討を進めていたが、実現できなかった。今後、実現に向けて準備を進める。また、本研究の着眼点は、昨今注目されている「中動態」や仏教的な縁起の法の視座との類似性がある。こうした異分野との議論は研究を深めるために役立つと考えられることから、こうした分野との議論の機会も模索する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
金額の多くを占めている渡航費であるが、これについては基本的にCOVID-19の影響より、計画立案当初通りには行えていないため、次年度使用額が生じた。 また、2021年度実施した勉強会の講師7名については、2020年度同様謝礼の支払いが不要となったことから、支出が少なくなっている。また、企業におけるフィールドワークについても、謝礼及び交通費等(オンラインのため)が不要となったことから、支出する必要がなかった。今後研究会もオンラインを前提とすることから、会場費等も不要となる可能性がある。それ以外については、当初予定通り、主に謝礼等の支払い、Webサイトの公開による情報発信に必要な費用に用いる予定である。
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