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2019 年度 実績報告書

「大学入試学」基盤形成への挑戦――真正な評価と実施可能性の両立に向けて――

研究課題

研究課題/領域番号 19H05491
配分区分補助金
研究機関東北大学

研究代表者

倉元 直樹  東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 教授 (60236172)

研究分担者 田中 光晴  国立教育政策研究所, 国際研究・協力部, フェロー (00583155)
山地 弘起  独立行政法人大学入試センター, 研究開発部, 教授 (10220360)
内田 照久  独立行政法人大学入試センター, 研究開発部, 教授 (10280538)
銀島 文  国立教育政策研究所, 教育課程研究センター基礎研究部, 総合研究官 (30293327)
西郡 大  佐賀大学, アドミッションセンター, 教授 (30542328)
泉 毅  東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 助教 (30828447) [辞退]
安成 英樹  お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (60239770)
小泉 利恵  順天堂大学, 医学部, 准教授 (70433571)
宮本 友弘  東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (90280552)
研究期間 (年度) 2019-06-28 – 2023-03-31
キーワード大学入試学 / 真正な評価 / 実施可能性 / 書類審査 / 面接試験 / 記述式問題 / CBT / 4技能
研究実績の概要

大学入学者選抜に抜本的な改革が図られる中で,大学と高校の過剰な負担が懸念されている。わが国の大学入試改革においては常に多様化が追求され,近年は特に評価の真正性が志向されてきた。その一方で,時間的人的コストは等閑視される傾向にあった。本研究では従来からの「労力注入型」の入試改革を転換し,真正性と同時に効率性,信頼性,公平性を追求する大学入学者選抜方法の確立を模索する。そのことによって,実施可能性の高い入試方法の開発を目指す。
従来の大学入学者選抜に関わる議論は,理論と現実のはざまで大きく揺れ動いてきた。大学進学率がユニバーサル段階に達した現在,誰しもが自己の経験を基盤に持論を展開することが可能な分野である一方,初中等教育と大学を取り巻く環境の変化は大きく,過去の経験に依存した議論が通用しない状況となっている。建設的な議論の基盤となるエビデンスが必要である。本研究は,これまで学問の対象とみなされず,軽んじられてきた大学入学者選抜の分野に「大学入試学(Admission Studies)」とでも呼ぶべき学術的研究分野を確立することで,間歇的に現れ,その時の受験生を翻弄する限りない入試改革の円環から脱却し,わが国の実情に合致した大学入学者選抜に関する議論の基盤構築を目指すものである。
4年計画の初年度である今年度は,研究課題を「堅実型選抜方法」と「挑戦型選抜方法」に大別し,6班編成で研究を遂行する体制を構築した。前者には「書類審査開発班」「面接試験開発班」「記述論述問題開発班」が,後者には「4技能評価開発班」「CBT開発班」「新評価方式開発班」が含まれる。手始めに研究成果発信のためのウェブサイトを立ち上げた。さらに,文部省の長年の政策目標が本研究のテーマと一致することや「大学入試学」のイメージを伝える書籍を1冊刊行したことが,本研究計画の初年度における眼に見える成果である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の採択時期が7月になってからであったので,年度途中からの体制づくりに多少の苦労が付いて回った。最初に事務局体制を整えるべく,研究関係の事務処理を担当する非常勤職員を雇用し,研究体制の基盤構築に腐心した。予想外の研究分担者の出入りがあったため,研究分担関係の再調整を行った。研究体制を立ち上げるための研究会を8月に開催したが,直前に起こった予期せぬアクシデントによって,急遽,プログラムを変更することになるなど,多難な門出となった。
一方,研究成果発信のための基盤づくりは順調に進んだ。9月には本研究の研究成果発信のためのウェブサイトが完成した。初年度に計画されていた外国調査は,研究代表者と分担者2名に加え,2名の研究協力者が参加して中国を対象に行われた。中国の大学入試統一試験である「高考」を管轄する中国教育部考試中心(中国教育省入試センター)をはじめ,現在,先行して入試改革に取り組んでいる上海市教育部考試院(上海市教育委員会試験センター)や北京教育部考試院(北京市教育委員会試験センター)などを視察,大学入学者選抜制度の多様化に向けて取り組みを進める中国の状況に関する情報収集を行った。
さらに,それに加えて,本研究の最初の成果として「東北大学大学入試研究シリーズ 『大学入試学』の誕生」を上梓した。第1部の「『大学入試学』構想の軌跡」においては,個別大学の立場からみた大学入試の原則や,文部省(当時)が戦後一貫して追求してきた大学入試の科学化の構想などを紹介した。さらに,第2部「大学入試研究の実情と課題」,第3部「大学入試研究の可能性」で,本研究計画が追求する「大学入試学」の一つのプロトタイプを提示した。4年間という短い期間の計画であるが,「挑戦的研究」に相応しいチャレンジの足掛かりを作ることができた。

今後の研究の推進方策

新型コロナウィルス感染症の拡大が,本研究計画の遂行にとっては最大の障壁となるであろう。そもそも,当初計画ではわが国も含む各国において現行制度やその改革が進行していく中で,新しい大学入試研究の基盤を探っていくことが前提であった。しかし,人と人との物理的な関わりに制約が置かれ,それがどの程度の期間,どのように続いていくのか不明な状況下では,当初の前提がどこまで確かなものと考えてよいか分からない。難しい局面が到来した。
さらに,研究分担者間の物理的接触がままならない環境下で,どのようにコミュニケーションを取り,研究を遂行していくかということも大きな課題である。国の間や都道府県を超えた移動制限がどこまで続くかということによって,モニター調査の計画,海外調査や国際学会における研究成果の発表等、当初,2年目に想定されていた研究遂行計画の大幅な見直しをする必要が出てくる可能性がある。ただし,すでにウェブサイトを構築し,初年度の成果を基にした発信も計画されている。若干の研究計画の組換えを行い,可能な限りの成果発信を行う予定である。
しかしながら,コロナ環境,ないしは,ポストコロナ時代の大学入学者選抜という全く想定されていなかった課題は,「挑戦的研究」という本研究の位置づけから見て,新たに追及すべき価値のある研究課題が与えられたと考えるべきかもしれない。具体的に何をすべきかについては,これから精査すべき課題となるが,本研究計画の中に新たに加わる要素であることは間違いない。幸いにして,来年度,補助金から基金への変更がなされる。基金化をきっかけとして,柔軟な研究遂行が可能となった。大胆に研究計画を組換え,4年間の研究機関を活用した成果追求を試みる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 図書 (1件)

  • [図書] 「大学入試学」の誕生2020

    • 著者名/発表者名
      倉元直樹
    • 総ページ数
      204
    • 出版者
      金子書房
    • ISBN
      978-4-7608-6101-9

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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