研究実績の概要 |
台形の宙吊りグラフェンチャネル構造において、下底長WBを1.2 umに固定し、上底長WUを0.4, 0.6, 0.8, 1.0 umと変化させたナノフォノニック素子を作製した。これによりフォノン進行方向に対して斜辺の角度が72度~22度と変化するため、チャネルの幾何学的非対称性とエッジ散乱の影響が変化すると考えた。リファレンスとして幅1.2 umの長方形チャネル構造も作製した。また、真性グラフェン中のフォノン平均自由行程~0.775 umに対して、チャネル長(台形高さL)を0.5 umに固定し、フォノン輸送が準弾道輸送となるように設計した。さらに、チャネル長0.5 um、幅1.2 umの長方形チャネルに、集束ヘリウムイオンビームミリング(HIBM)技術を用いて、直径5~6 nm, 孔間隔30 nmのナノメッシュをチャネル半面だけに形成した非対称ナノメッシュチャネル構造を作製した。 これらの非対称チャネルの両端に4端子電極を作製し、Differential Thermal Leakage計測法で電気伝導特性と熱伝導特性評価を実施した。まず全ての台形・ナノメッシュ構造に対して、電圧の極性を入れ替えても電気伝導特性に非対称性はみられないことを確認した。次に、基本となる長方形(対称)チャネルで、熱バイアスの極性を順・逆切り替えても熱伝導は変化しないことを見出した。その上で、台形チャネルに対する熱伝導を環境温度150 Kで評価したところ、WUが短くなるに従い熱整流度が徐々に大きくなる傾向を見出した。WU=0.4 umのチャネルで得られた熱整流効率は最大で~95 %であった。一方、 非対称ナノメッシュチャネル構造においても、環境温度150 Kで熱整流効率~80%を観測した。いずれの非対称素子においても、環境温度の上昇とともに熱整流作用は小さくなり300 Kでは消失した。
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