研究課題
本研究では、1分子蛍光検出の原理を医療検体内の生体分子の検出・分析に適用することで、1分子粒度での分析化学の方法論を開拓することを目指している。第3年度となる本年度においては、一細胞内に存在する全タンパク質の1分子蛍光検出および生化学アッセイの1分子感度化に関する実験を行った。前者においては、以前開発した1分子蛍光ゲル電気泳動法を利用し、一細胞内に存在する全種類のタンパク質の1分子レベルでの定量化を行った。まず、細胞ピッキング装置を利用し、個々の細胞をドロップレットの中に捕獲した。ドロップレットの中でタンパク質抽出および蛍光標識を行った後、ゲル電気泳動にて分画を行い、1分子蛍光顕微鏡で測定した。その結果、各分画に存在する蛍光標識タンパク質の数を1分子レベルで計数することが可能であり、サブアトモーラーレベルの感度を達成できることが確認できた。さらには、詳細な局在情報の解析により、通常のゲル電気泳動と比べて分離能も向上できることが分かった。現在は、細胞間のばらつきを定量的に解析するため、100個から1000個レベルの細胞において大規模に測定を行うシステムと画像解析法の開発を進めている。後者においては、標的配列およびタンパク質との結合によって発光する核酸プローブと免疫染色法の開発を行った。アッセイ終了後、溶液を素早くゲル化し蛍光検出を行うことで、ターゲットを一分子感度で検出できることを確認した。さらに、多数の検体のハイスループット計測を行うため、アッセイからゲル化まで半自動で行える自動分注ロボットのプログラムを開発した。
1: 当初の計画以上に進展している
一細胞試料中の全タンパク質および血清バイオマーカーの検出が1分子レベルで可能であることをすでに立証し、本研究課題の目標であった1分子粒度での分析化学の方法論の提案にすでに至っているため。現在では、一細胞オミクス解析などの生物分野や、臨床検査などの医療分野に応用できる段階まで研究が進展している。
研究計画は現在のところ順調に進捗しており、今後も申請時の研究計画の流れに沿って研究を進めていく予定である。 次年度においては、多種類の生体分子を識別できるように、蛍光プローブの開発や他の光学信号(ラマン散乱など)による1分子検出などについて検討する。さらには、試料準備から1分子蛍光検出、画像解析までを、ハイスループットかつ自動的に行えるシステムを構築し、1分子分析化学の実用化を目指す。
新型コロナウィルス感染症の影響により、予定していたスケジュールで実験等の研究計画を進めることが困難となったため
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件、 招待講演 9件)
Nature Protocols
巻: 16 ページ: 3439-3469
10.1038/s41596-021-00543-z
Bioinformatics
巻: 37 ページ: 4562-4563
10.1093/bioinformatics/btab698