研究課題/領域番号 |
20K20458
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷口 雄一 京都大学, 高等研究院, 教授 (90556276)
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研究分担者 |
川井 隆之 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 客員研究員 (60738962)
金 水縁 京都大学, 高等研究院, 特定講師 (50758886)
大野 雅恵 京都大学, 高等研究院, 特定講師 (10581738)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 1分子蛍光検出 / 超高感度顕微鏡 / 分析化学 / 医療分析 / プロテオミクス |
研究実績の概要 |
本研究では、1分子蛍光検出の原理を医療検体内の生体分子の検出・分析に適用することで、1分子粒度での分析化学の方法論を開拓することを目指している。本年度においては、前年度までに開発したシステムを用いて様々な細胞種における1細胞内の多数種のタンパク質の定量化を行うのと共に、高次元統計学的手法を用いた測定データの解析を行った。 前者においては、これまで開発してきたゲル電気泳動を基盤とする測定システムを用いて、PC3、U2O2、HeLa細胞(それぞれ前立腺がん細胞、ヒト骨肉腫細胞、子宮頸がん細胞)における1細胞内の多数種のタンパク質の定量化解析を行った。一細胞ハンドリング装置(ヨダカ技研、ToPick)を用いて個々の細胞を分取し、そのまま細胞溶解と蛍光色素のラベリングと一分子蛍光電気泳動を行うプロトコルが確立でき、細胞個々のタンパク質量のパターンを再現性良く得られるようになった。この方法を用いて、複数の一細胞試料から得られた電気泳動プロファイルを比較した結果、約25.2%のCV値が得られた。同一の細胞試料で測定を行うことで得られるCV値(14%)よりも有意に大きな値であることから、得られたデータは細胞間のプロテオームのはらつきを反映していると考えられる。 後者においては、得られた電気泳動プロファイルの次元削減解析を行った。その結果、次元削減後の空間において、電気泳動プロファイルのデータから異なる細胞種の細胞を十分に見分けることができることが確認できた。開発に成功した「一分子・一細胞蛍光電気泳動法」は、現存するタンパク質分析法の中で最も高い感度を有するのに加えて、一細胞内の複数種のタンパク質の量を、従来法である質量分析や抗体染色よりも安価に、かつ簡便に実施できる。本手法は、微小量の分子の精密な定量化を必要とする、様々な生命科学研究や臨床検査に応用が進むものと期待できる。
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