研究課題/領域番号 |
19H05557
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小田 竜也 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20282353)
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研究分担者 |
舘野 浩章 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (30450670)
籏野 健太郎 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50228475)
森 健作 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80361343)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | PETプローブ / 糖鎖 / レクチン / 膵癌 |
研究実績の概要 |
臓癌などの難治癌は、早期診断しか根治・救命の道は無いが、既存の“Passiveイメージング”診断では早期発見ができない。そこで、積極的にがん病巣を映し出す“active イメージング”診断の開発が進められてきたが、そのバイオプローブとしての抗体は非常に大きく、動物細胞でしか作成が出来無いため高価で、必ずしも最適なプラットフォームとは言いがたい。 我々は、細胞の最外層を覆う糖鎖に着目し、膵癌幹細胞に特異的な糖鎖発現と、それを認識するレクチン(糖鎖を認識するタンパクの総称)の組み合わせを見つけた。このrBC2レクチンは血中に投与した場合、全く血液凝集などの不都合な副作用を起こさない。そこで、このrBC2レクチンという小分子(16Kd)タンパク質を画像診断用プローブとして応用し、がん細胞表面に多量に発現している結合パートナー(糖鎖)を標的することによる新規active イメージング診断法を開発する。 2019年度は、rBC2レクチンに64Cuをラベルする事を試みた。本rBC2レクチンはタンパクであり、既に確立している抗体を標識する方法の応用が可能だと考えた。方法としては、まず温和な条件下でキレータ-であるDOTA(1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid)をrBC2レクチンに導入する。そこに、ポジトロン放出金属である64Cuを標識する。我々の予備実験から、本レクチンが生体内で腫瘍に集積する為には12時間程度要する事がわかっていたので、半減期12.7時間の64Cuを利用する事が適切だと考えた。2020年度は、様々な条件を変えてrBC2レクチンに64Cuをラベルする事を試みたが、結果的にそれは困難である事が判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初、期待した64Cuのよるラベル化が予想とは異なりうまくいかず、PETプローブを得る事ができなかった。予備的に行った18Fによる標識は、SFBおよびFBAMの2パターンで標識を試し、収量に課題はあるもののプローブが得られる事がわかった。 また、動物用PET-CTの導入が本予算だけでできず、仮にPETプローブが得られたとしても、それをin vivoでの実験を行う事はできなかった。こちらも、2019年度予算を繰越申請し、また、各種予算と合算する事により、2020年度に動物用PET-CTの購入が叶った。 これらのことから、2020年度以降は予定通りの研究遂行が可能だと予想している。
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今後の研究の推進方策 |
たんぱくであるBC2レクチンをフッ素を使ったPETプローブ化するには主に2つの調整方法、SFB法とFBAM法がある。2019年度、64Cuを使ったPETプローブ化がうまくいかなかったので、2020年度は 18Fを使ったPETプローブ化をSFB法とFBAM法の2種類で試みる。また、放射性同位元素以外の蛍光物質であるIR700でBC2レクチンに標識する方法にも取り掛かる。 {SFB法}18Fを調整後、フッ素化・加水分解を行う。その後スクシニル化精製し、たんぱくの標識物を得る。{FBAM法}18Fを調整後、フッ素化を行う。その後マレイミド化精製し、たんぱくの標識物を得る。{蛍光物質IR700のラベル} {評価系A: in vitroの系}rBC2レクチンが結合する糖鎖(Htype3)を発現している膵癌細胞株(Capan-1)と、全く発現していない株(Suit-2)に作成したPETプローブ、もしくはIR700化BC2レクチンを反応させて、Capan-1にだけ特異的に検出する事を確認する。 {評価系B: 臨床膵癌検体}(30検体を想定)の癌部と非癌部(×2)の薄切切片にPETプローブもしくはIR700化BC2レクチンを反応させ、癌部だけに反応することを確認する。また、心、肺、肝、腎、胃、小腸、大腸、生殖器の薄切切片に対しても反応させ、非特異的な結合を確認する。
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