研究課題/領域番号 |
20K20503
|
研究機関 | 国文学研究資料館 |
研究代表者 |
渡辺 浩一 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (00201179)
|
研究分担者 |
籠橋 俊光 東北大学, 文学研究科, 准教授 (00312520)
東 昇 京都府立大学, 文学部, 准教授 (00416562)
山田 浩世 沖縄県立芸術大学, 付置研究所, 研究員 (00626046)
宮間 純一 中央大学, 文学部, 准教授 (10781867)
神谷 智 愛知大学, 文学部, 教授 (20283377)
谷本 晃久 北海道大学, 文学研究院, 教授 (20306525)
伊藤 昭弘 佐賀大学, 地域学歴史文化研究センター, 教授 (20423494)
塚原 伸治 茨城大学, 人文社会科学部, 准教授 (30735569)
望月 良親 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 講師 (30814040)
作野 広和 島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (50284146)
原 直史 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (70270931)
板垣 貴志 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 准教授 (80588385)
西村 慎太郎 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (90383546)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
|
キーワード | 在地史料 / 庶民史料調査 / 現存 / 限界集落 / 無住化 / むらおさめ |
研究実績の概要 |
本研究の第一段階は、1950年前後に行われた全国庶民史料調査において対象となった史料群が、その後現在に至るまでにどのように保存・活用されてきたのか、あるいは途中で滅失してしまったのかをサンプル的に調査することである。 その前提として、国文学研究資料館が所蔵する庶民史料調査の目録を研究分担者が利用できる仕組みを構築した。その仕組みは部分的には機能した。 各地区担当の研究分担者は、その基礎情報に基づき、庶民史料調査の対象となった史料群の現況を調査する予定であった。しかし、新型コロナウィルス感染症流行の影響で調査を行うことができなかった地区が多く、人的ネットワークによる情報収集が部分的に行われるにとどまった。 全体研究会は、コロナ流行の状況をにらみつつ対面での開催時期を探っていたが、流行が収束しないためそれは断念し、3月16日にリモートでの開催となった。報告は、東昇「京都府下における近世庶民史料調査の追跡と課題」、作野広和「集落の限界化・無住化と「むらおさめ」の考え方」であった。この意図は、東報告においては、調査方法の共有化である。近世庶民史料調査対象文書群の追跡調査に関しては、それぞれの地域に詳しい研究者からの聞き取りが有効であることが確認できた。作野報告においては、現代社会分析の専門家から学ぶことにより、史料群の伝存経過を各地域の戦後史のなかで位置付ける方法を考えるためである。現実の課題に取り組んでいる研究者と、古文書調査を行う研究者が、同様の現況に直面していることが確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
総括班の活動の具体は、『近世庶民史料調査報告』(刊行された史料群概要)をPDF化してクラウドで共有し、研究分担者はこれを見て目録原本を総括班に請求し、総括班ではそれを写真撮影してクラウドに共有することであった。また、現長野市域における史料群の現況について、長野市立真田宝物館の学芸員から聞き取り調査行った。 新型コロナウィルス感染症流行の影響で、各地区担当の研究分担者による調査の進捗状況は多様であるが、京都府に関しては庶民史料調査で対象となった史料群の現況については人的ネットワークを通じた調査によって、ほぼ把握できた。 また、北海道大学図書館所蔵の図書『近世庶民史料調査報告』からは、当時の東京の調査委員会から送付された、全国庶民史料分布図の写真が発見された。 全体研究会では、東報告が京都府における庶民史料調査対象史料群の現況を概括的に把握した。作野報告は地理学からの現代社会変化の分析であり、在地の史料調査を行ってきたメンバーの個別的体験と大きく響き合うことが確認できた。
|
今後の研究の推進方策 |
前述の京都府と長野市域の状況では、史料群の現存率は、大分県・広島県・三重県のような1960から70年代の悉皆調査対象史料群よりもかなり高い傾向がある可能性が出てきた。これは庶民史料調査対象がそもそも特定の性格を帯びていた可能性があるため、庶民史料調査それ自体の性格の把握が課題として認識された。また、今後この点に注意して所在調査を進める必要があることも明らかになった。 2021年度も新型コロナウィルス感染症流行による行動の制約が長く継続しそうな状況である。引き続き各分担者による文献調査を行い、コロナ収束後の現地調査に備えたい。あわせて、史料を伝存あるいは消滅させてきた現代社会分析の方法を、関連文献の講読により模索し、これまた現地調査に備えたい。 特に、各県における史料保存機関の設立状況について、設立されなかったことも含めて各地域の戦後史のなかで理解しておくことは不可欠のため、調査不可能期間にはこうしたデスクワークを進めたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症流行のため、史料調査に行くことがほとんどできなかったため。2021年度も、5月下旬の時点では、ワクチン接種も進んでおらず、2020年度とほぼ同じ状況となることが予想される。引き続き、本格的史料調査の準備を、総括班および各研究分担者は進めることとしている。リモートでは複数回の研究会を開催する予定である。
|