アスリートや健康を目指す人々には、ある強度を一定時間持続する定常運動が主に推奨される。これは、運動生理学が人工的な運動条件により、身心の機能向上や生活習慣病の予防・改善に資する運動効果を解明してきた成果である。一方、大空を飛翔する鳥類、大海を遊泳する魚類、ホイールで走行する齧歯類、先を急ぐヒトなど、動物の移動運動(ロコモーション)は種を超えて断続的である本研究は、ロコモーションの進化に基づく断続運動モデルを開発し、そのエネルギー効率と身心の機能に及ぼす有益な効果を解明することを目指す。 4年計画の最終年度である令和5年度は、実験3を更に発展させ、埋込型の活動量および体温センサーを用いて、実験1および2で開発した、エネルギー効率の高い断続運動形態が、運動後に体重増加に関連して生じる身体活動性や体温の低下を予防しうるかどうかを検討するため、事前にセンサーを留置したマウスに安静、またはレーン長の異なるトレッドミル走運動を課し、その後の行動と整理動態を検討した。 その結果、持続走を行ったマウスではその後に身体活動性や体温の低下と関連して体重が増加するが、 断続走を行ったマウスでは身体活動性と体温の低下が抑制され、体重も増加しなかった。この際、身体活動量と体温の同調性やコルチコステロンの概日リズムが持続走では乱れてしまうが、断続走では乱れないことを確認できた。 これらの結果は、進化に基づく断続型運動は、脳内の乳酸上昇とそのシグナル伝達を抑えることで、運動中の疲労形成を抑制するだけでなく、運動後の疲労をも緩和し、身体活動性や体温(熱産生)の低下を防ぐように役立つ可能性を初めて明らかにした。成果の一部は、学会および論文として発表することができた。
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