研究課題/領域番号 |
20K20683
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
Alam Djumali 山口大学, 人文学部, 教授 (10290991)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | キャラクター / 擬人化 / 記号 / 精神分析 / 転移 / 偶像 |
研究実績の概要 |
初年度の研究活動では、以下2点の作業を行なった。
【事例の取材と整理】計画している10のキャラクター/物語のうち、以下六つの取材と情報の整理を行なった。①映画『動物戦隊ジュウオウジャー』の怪人「ジニス」と「クバル」。②ミュージカル『忍たま乱太郎』の「善法寺伊作」と「立花仙蔵」。③『ハイキュー!!』(漫画と2.5次元舞台)。④ロックバンド『amazarashi』。⑤『うたの☆プリンスさまっ♪』(ゲームとライブ)。⑥ゲーム『ファイアーエムブレム』。 【分析的視座の精緻化】本研究の目的はキャラ活(キャラクターを実体化する活動)の際に起こる擬人化と記号化の関係を明らかにすることであるが、初年度の研究では、この二つの心的作用に、精神分析学的な意味の「転移」と、とりわけラカンの構想として知られる「鏡像段階」「3領野(現実界・象徴界・想像界)」と密接に関係していることを察知し、この視点から、キャラ活分析を試みた。この場合の転移は、キャラ活の主体が「欲望を満たす対象(キャラクター)と何らかの関係を結ぶこと」として捉え、そしてキャラクターは、象徴界にいるアクターの欲望を満たすことが可能な、想像界のイメージと見ることができる。象徴界(俗界)の抑圧的な縛りや統制を受けるアクターが、文化的な価値観を越えた、多様な不足・欠陥・欲望を抱えている中、キャラクター(推しキャラクターなど)は、その一つ一つの、またはその一部や一面の欲望に応えるかのように、アクターの心の穴を埋める。こうしたマッチングをかなえるのが、“シャフト”の役割を果たす、擬人化と記号化という心的操作である。
すでに取材を終えた上記六つのキャラクターは、四つの異なる媒体(映画、ミュージカル、ライブ、ゲーム)を通して主体と関係しているが、この先の研究で、それぞれの媒体と接する主体を、主に転移の観点から分析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィールドワークは当初の研究計画りに進んでいる。種々の媒体から10のキャラクターに関するデータを収集・整理する計画については、すでに六つのキャラクターの調査を、若干の不足情報を残したものの、おおむね計画通り進めることができた。また、初年度の段階で、研究計画にある構想をさらに発展させ、調査済みの六つのキャラクターとオーディエンスとの関係に適用し、一定程度の分析結果と新たな発見を得ることができた。調査の実施に関しては、当初の研究計画にある通り、人件費(特に学生アルバイト)を要するが、この点に関しても、初年度に5名の学生の協力を得て、上記六つのキャラクターとオーディエンスとの関係に関する情報収集と分析を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
二年目(全体の中間年度)に当たる今年度(2021年度)は、以下のことを進める。
1)研究対象のキャラクターを、新たに四つ取り上げ、キャラクターに関するデータとオーディエンスとの関係について整理する。 2)すでに一定の調査を終えた六つのキャラクターと合わせて、互いに比較しながら分析を試みる。その際、「精神分析学」(ラカン派)の視点、とりわけ「転移」と「イメージ」の概念を中心に練った構想を、キャラ活(キャラクターを実体化する活動)に適応して分析を可能なところまで進める。 3)年度内に、「キャラ活における転移」(仮題)の論文を執筆して公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の実施に関しては、予定していた経費のうち、二万円弱を次年度に使用することになった。5名の学生の協力を得て進めた、前記六つのキャラクターに関する情報収集が、若干予定よりも早めに完了したためである。情報収集が完了したわけではなく、コロナ渦の中で、いくつか見学を予定していたイベントが中止になったためである。 繰り越し経費の使い道については、2021年度に行う、新たな四つのキャラクターに関する情報収集と、前年度に調査した六つのキャラクターのうち、追加情報が必要な収集活動にあてる予定である。
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