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2020 年度 実施状況報告書

土器・陶磁器の破片の磁化を用いる年代推定,製品復元の研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K20716
研究機関富山大学

研究代表者

酒井 英男  富山大学, 理学部, 客員教授 (30134993)

研究分担者 竜田 尚希  富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 助教 (30521314)
泉 吉紀  サレジオ工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (60793669)
高橋 浩二  富山大学, 学術研究部人文科学系, 教授 (10322108)
研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2023-03-31
キーワード土器・陶磁器の破片 / 磁化 / 帯磁率 / 年代推定 / 製品復元
研究実績の概要

土器・陶磁器は生成時(焼成時)に地磁気ベクトルの記録として残留磁化を獲得する.生成後に移動するので,地磁気方向の偏角は不明になるが,伏角は焼成時の水平面がわかれば求めることが可能であり,またテリエ法等の実験により地磁気強度も復元できる.本研究では,土器・陶磁器の底部等の水平面が推定可能な破片を用いる古地磁気研究法の開発を目的として,基礎実験と考古資料の研究を行う.
本年度,考古遺物の研究では,富山市内の2箇所の遺跡(奈良時代)から出土した複数の土器破片の,磁化研究と解析を行った.底部破片では,交流消磁により磁化方向が大きく変わるものがあり,煮炊きに使われた為と考えられた.土器が焼成時に獲得した磁化は,その後の煮炊きの際に,加熱温度までの成分が失われ,新たな磁化が別方向に獲得されて2成分になる.そして,消磁では低温部が先に消えるので方向が変わると考えられる.また土器の蓋(破片)の磁化測定を平らな面を下にして行った所,伏角には下向き・上向きのものがあった.これは,奈良時代の土器の蓋は,窯入れの際につまみを下に積み重ねる場合もあったと示唆されており,その証明にもなる結果であった.
底部破片の磁化研究(テリエ法実験も含む)で得た地磁気の伏角と強度は,窯跡焼土での先行研究で求められていた同時代の地磁気と調和し,土器底部は地磁気の復元に適すると示された.土器の蓋の研究では,伏角は大きく外れており,蓋は窯内で傾けて焼成されたと考えられる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は基礎実験と考古資料の研究からなる.基礎実験は現在の陶磁器・盃を用いて実施しているが,任意に分割した破片の磁化方向による製品復元や,伏角からの製品の産地推定の実験を行い,良好な結果が得られた.考古資料では,富山市内の遺跡から出土した土器の底部と蓋の破片を対象に,残留磁化測定とテリエ法実験を実施し,土器生成当時の地磁気(伏角と強度)を復元することができた.また磁化による製品復元と年代の研究は,青銅器の破片でも実施して良い結果が得られ,成果を現在まとめている.
新たに,破片(部位)での組成の違い(不均一性)を検討するため,遺跡出土の陶磁器(完形品)の帯磁率分布の研究を行った.非破壊測定で調べた結果,幾つかの陶磁器で部位による帯磁率の有意な違いがあった.これは,陶磁器製作時に胎土の組成が故意に変えられた可能性を示唆しており,この研究法により土器に関する新たな情報が得られると考えられる.
分担者と予定していた,土器破片の磁化を磁力計で精度良く測定する為の,固定持具の作成や試料設置での誤差補正の検討が,コロナ禍の影響により富山大で行えず滞っているが,上述の様に,全体として研究はおおむね順調に進展していると考える.

今後の研究の推進方策

土器・陶磁器の破片の磁化による,過去の地磁気を求める研究や製品復元の研究の精度を上げるには,破片の磁化の信頼性をチェックできる条件や基準が必要である.超伝導磁力計で土器・陶磁器の破片の磁化を測定して結果を検討した所,底部破片では,側面部をあまり持たず対称性の良い試料が精度良いデータを示した.また磁化測定では,試料の中心付近の1点で行うよりも,ある程度の幅を連続に数mm間隔で測定して,磁化強度のピークを示す点のデータを採用すると誤差が少なくなる傾向が認められた.以上の様な,破片を用いる磁化測定での試料の条件や測定・解析の基準の作成を今後進める.考古遺物の測定は非破壊が原則であり,整形できないので,いびつな試料の磁化データでの補正についても検討する.
遺跡出土の研究試料として,近傍の埋蔵文化財センタ・財団が所有する新たな土器・陶磁器の破片について,情報を頂き,研究に適する試料を検討・選択してお借りする.また北海道の擦文土器の研究では,磁化測定を終えている試料についてデータ解析を進め,結果の検討を行う.地磁気強度のグローバルな研究として,研究室に保有の中近東の土器片を用いる実験を行い,関係性が議論されている,地磁気強度と気候との相関をみる研究も予定している.

次年度使用額が生じた理由

分担者が計画していた富山大学での共同実験が,コロナ禍の移動制限により行えなかった.また磁化研究に用いる超伝導磁力計及び分担者の装置の,測定の精度と効率を上げるために作成を予定していた試料設置の持具も,打合わせと作業ができず完成しなかった.以上の研究費は繰り越した.
分担者・協力者との打ち合わせと共同実験の費用,上述の持具作成の経費も含めて,予算計画を立てている.また基礎実験と併行して行う考古試料の研究に用いる土器・陶磁器の破片は,近傍機関と共に他県の機関からもお借りし,研究室保有の外国の土器片の利用も予定している.これらの研究試料に関する費用も見込んでいる.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (5件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 山東省出土鏡笵の磁化研究2021

    • 著者名/発表者名
      菅頭明日香,酒井英男,清水康二
    • 雑誌名

      山東臨し;漢代鏡笵与銅鏡研究 白雲翔他編 中国社会科学院考古研究所

      巻: - ページ: -

  • [雑誌論文] 杉谷1番塚古墳-第2次調査報告書2021

    • 著者名/発表者名
      髙橋浩二編
    • 雑誌名

      富山大学人文学部考古学研究室

      巻: - ページ: 1-34

  • [雑誌論文] 考古地磁気を用いた杉並区向ノ原遺跡の炉穴の研究,向ノ原遺跡第3次調査2020

    • 著者名/発表者名
      菅頭明日香,酒井英男,合田恵美子
    • 雑誌名

      東京都埋蔵文化財センター調査報告

      巻: 358 ページ: 456-461

  • [雑誌論文] 日本海文化論の遺跡を訪ねる2020

    • 著者名/発表者名
      髙橋浩二
    • 雑誌名

      昭和堂

      巻: - ページ: 67-83

  • [雑誌論文] 立山カルデラ内で掘削されたボーリングコアの磁化研究2020

    • 著者名/発表者名
      酒井英男,境悠希,竜田尚希
    • 雑誌名

      富山県立山カルデラ研究紀要

      巻: 17 ページ: 7-12

  • [学会発表] 勝興寺における地中レーダ探査2021

    • 著者名/発表者名
      泉吉紀,酒井英男,竹内勝信
    • 学会等名
      日本情報考古学会第44回大会

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公開日: 2021-12-27  

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