研究課題/領域番号 |
20K20747
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小浜 祥子 北海道大学, 大学院公共政策学連携研究部, 准教授 (90595670)
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研究分担者 |
西 平等 関西大学, 法学部, 教授 (60323656)
前田 亮介 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (00735748)
三船 恒裕 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 准教授 (00708050)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | 国際政治 / 人質 / 信頼 / 集団間関係 / 人質をとる行為に関する国際条約 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、和平等の合意を保障するために供出あるいは交換されていた人質という仕組みの在り方を、中世にまでさかのぼって理論的に検討し、さらにそれが近世から近代にかけて変質した要因を解明することを目的として実施した。二年目となる本年度は、初年度に実施した事例調査をふまえ、年度前半は仮説の構築、年度後半に社会心理学実験による仮説検証に取り組む予定であった。 今年度は、まず5月にオンライン・ミーティングを実施し、初年度の研究調査の内容を小括し、仮説構築に向けた検討を行った。具体的には、(1)古代から現代まで変質しつつも存続してきた「人質」という仕組みをどのように定義するか、(2)人質の慣行に共通する基本的な性質(人質を出す・取るための資格等)、(3)人質が合意保証に果たしていた機能についての仮説、(4)人質が機能するための前提条件といった論点について議論を行った。 以上のミーティングの内容をふまえ、8月にもオンライン・ミーティングを実施し、仮説について社会心理学の視点から議論を行った。本研究課題は国際政治学、国際法学、歴史学といったバックグラウンドを異にするメンバーの共同研究であることから、まずは社会心理学における集団間の葛藤に関する理論および実証について理解を深めた上で、集団間の紛争状態の停止において人質が果たしうる役割について示唆的な仮説のいくつかを検討した。今後はこれらの検討結果に基づき、再度、具体的な事例を見直し、仮説を確定していくこととなった。また実験室実験を用いて仮説検証を行う上での潜在的な障壁についても議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画において、本年度の前半は初年度に行った事例調査に基づく仮説構築を、年度の後半は、その仮説の社会心理学実験による検証を予定していた。 研究計画に基づき、本年度前半は二度のオンライン・ミーティングを実施し、仮説構築を目指して議論を行った。新型コロナウイルス感染症の影響で、対面での打ち合わせや調査を実施できなかったために、当初想定していた形での研究ができなかったこと、人質の実践例が多岐にわたり、また中世の世界での人質の実践を社会心理学の理論を用いて論じることには慎重でなければならないことから、具体的な仮説を確定するには至らなかったが、仮説についての議論は大いに深めることができた。 本年度後半は、仮説検証を予定していたが、代表者の一身上の都合により研究を中断した。また新型コロナウイルス感染症の影響により対面での実験室実験に制約があることから、仮説検証は研究再開後の課題とする。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は本年度後半より中断しており、研究期間を延長して実施する予定である。延長期間においても、当初の研究計画に基づき、仮説の構築および仮説の検証に取り組んでいく。研究の初年度には、人質の関係の多様性が明らかになったことから、仮説構築に予定より時間をかけ、蓋然性の高い仮説の構築を目指すこととしていた。今後も具体的な事例と社会心理学の理論を行き来しつつ、仮説構築を進めていく。 仮説の検証にあたっては、実験室実験を実施する予定としている。これまでの議論の中で、人質の供出・交換を実験室にて再現する際の課題についても論点が浮上している。こうした点についての議論も深めつつ、実験室実験の設計にも注意深く取り組んでいく。実施にあたっては、新型コロナウイルスの感染状況を注視しつつ時機を見極める必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、代表者の所属研究機関の研究活動指針により、感染症拡大地域への出張等にかかる自粛要請が発せられたために、当初予定していたプロジェクトメンバーの研究打合せや資料収集等の調査にも制約があったことから、研究費に残額が生じた。また、一身上の都合により、年度途中から研究を中断したことから、その分の研究費が次年度使用額として生じた。 本年度生じた残額については、研究の再開後、改めて研究打ち合わせや資料収集、実験室実験を実施する経費として使用する。
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備考 |
小浜祥子「〔教授陣のマンスリー講座〕日米首脳会談 広報外交活用の場に」北海道新聞2021年5月15日朝刊 前田亮介「〔教授陣のマンスリー講座〕象徴天皇制 国民意識の弱さ投影」北海道新聞 2021年8月14日朝刊、「〔教授陣のマンスリー講座〕アイヌ文化振興法 成立に政権交代影響」北海道新聞 2022年2月12日朝刊
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